※Ver.1.1.0アップデートのネタバレ
あたまをからっぽにして読んでください。
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近頃、アズマでは妙なものが流行りはじめている。
その妙なものとはいったい何か――答えは等身大パネルである。どこの誰が始めたのかはいっさい不明だが、気づけば里人たちはおのれのパネルのレシピを編み出し、舞手なんかは伴侶のパネルを制作しては里に設置するようになってしまった。
「あ、マウロさん。よかった、探してたんですよ」夏の里の往来で出会ったスバルは、あろうことかその場で等身大パネルを差し出してくる。驚くべきはそれがあめのものであることで、マウロは喉で渋滞したツッコミを吐き出すことができず、ただそれを受け取るしかなかった。
「おいおい、スバル……こんなもの、オレにどうしろっていうんだ?」
ため息混じりに独りごちて、あめのパネルを持ち上げる。
そもそも、スバルはいったい何の意図をもってあめのパネルを作ったのだろう? マウロが呆気にとられているあいだに彼の背中は見えなくなってしまったが、今のマウロがやるべきことは彼を問い詰めることではなく、できるだけ人に見られないようこれを自宅へ持ち帰ることだろう。
口の端から漏れ出たため息を気合いに変換して、マウロは物陰に身を隠しながら進みはじめた。
◇◇◇
なんとかミッションをクリアしたマウロは、ひとまず居間の真ん中にあめのパネルを設置した。あめが留守にしていることは不幸中の幸いだ。
「しっかし、本当によくできてるな……さすが、『等身大パネル』と言うだけのことはある」
あめのパネルを眺めながら、マウロは腕を組んで考え込む。サイズ感はいつも見ているそれと同じだし、その麗しい顔立ちや紫陽花の色をした髪も、マウロのよく知るあめそのものだった。
けれど、所詮パネルはパネルである。この板は別に笑ったり照れたりしないし、鈴を転がすような声でしゃべったりもしない。マウロがちょっかいをかけるたび照れ隠しで目をそらすような、愛らしい仕草も見せてくれない。
……やっぱり、これはスバルに返しておこう。そう思い直してパネルを抱えようとした刹那、ふとこのパネルがスバルの元に戻ったあとの処遇がよぎる。
スバルのことだからよっぽどのことにはならないだろうが、もしこのパネルの隣に他の男が並んだらどうする? ……それだけじゃない。見知らぬ男があめのパネルに触れる可能性はゼロではないし、いくらただのパネルとはいえ、そんなことは許せない。
だからといってこのパネルが倉庫の奥でホコリを被るのも、あまり気持ちのいいものではない。枯れた樹枝を見ているからこそ、そんなふうに思ってしまう――マウロの心中はひどく複雑に絡み合い、うまく消化できそうになかった。
「このまま家に置いておくのが、一番マシな気がするね……」
であれば、いま考えるべきは、このパネルの経緯についてあめ本人にどう伝えるかということである。
あめが帰宅するまではせいぜいあと数時間。今日のマウロは、この長くも短い時間をすべて彼女へのうまい言い訳探しに費やしたのだった。
果たしてマウロの言い訳はうまくいったのだろうか? その真相は、ヴィアトレーアのみぞ知る――
2025/10/04
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