ディルックとハーネイアは変わらず仲睦まじく過ごしているが、しかし、二人の関係にはひとつ、ひどく身近で大きな障害があった。
それは、二人の生活リズムが微妙にズレているということである。オーナー業のみならず闇夜の英雄として日夜尽力しているディルックは、その活動の都合もあって夜が非常に遅く、対するハーネイアは花屋でバイトしている関係上どうしても朝が早くなるため、結果、就寝時間にズレが生じてしまうのだ。
しかし――否、だからこそ、二人は何気ない時間を大切にしている。もともとハーネイアはワイナリーで生活するようになってからバイトの数を減らしているし、ディルックも屋敷で書類仕事をしているときなど、交流の機会をなんとかひねり出していた。
そうした細切れの逢瀬を、二人は絶えず積み重ねている――
「あっ……ディルックさん! おかえりなさい……!」
闇夜の英雄業を終わらせて帰宅したディルックは、予想外の迎えに思わず目を見開く。使用人を起こさないよう静かに開いた扉の先に、ハーネイアが待っていたのだ。
玄関脇のソファに座って読者に勤しむ姿は、どこか時間感覚を狂わせるようでもある。
「どうしたんだ、こんな遅くまで――いや、むしろ早いと言ったほうが正しいか」
「えへへ……昨夜は特に予定もなかったので、思い切っていつもより早寝早起きしちゃいました。……そうしたら、ディルックさんのお迎えができるかなって」
分厚い本を閉じてぽてぽてと駆け寄ってくるハーネイアは、きちんと身支度を整えている。普段の職務も相まって、早く起きるのには慣れているらしい。
時刻は午前四時に差し掛かろうとしている頃合いだ。本来ならもう少し早く帰れていたはずなのだが、今日の敵は少々しぶとく、いささか手こずってしまった。
「えっと……ごはんにします? それともお風呂がいいですか? ――なんて、別にわたしが用意するわけじゃないんですけど――」
眉を下げながら笑う少女を、思わず抱きしめてしまった。汚れた体で抱きしめることにためらいはあったが、汚れたなら洗えばいいし、今はこの衝動を抑えきれそうになかった。
「すまない、君がほしくなった」そう伝えると、腕のなかのハーネイアが微笑んだ気配がする。応えるように背中へとまわされた手はやわらかく、それだけで今日の疲れが吹っ飛んでいく。
この逢瀬と抱擁は、待ちかねたアデリンが様子をうかがいにくるまで続いたのだが――その日のディルックに安らかな眠りが提供されたことは、もはや言うまでもないだろう。
貴方は×××で『四十五秒以内の逢瀬』をお題にして140文字SSを書いてください。
https://shindanmaker.com/375517
2025/09/13
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