「シラシメくんって、外では意外とおとなしいよね……」
しみじみとナタネがつぶやいたのは、なんてことない夕暮れのこと。ジムの閉館を見計らって彼女を迎えに来た帰り道、橙色に染まった町を眺めながら二人で歩いていたときだ。
こちらを見上げてくるナタネの顔を見れば、そこに他意がないことなど明らかである。嫌味でも、お叱りでもなく、ただたんじゅんに浮かんだ疑問なのだろう。
「意外と、って……僕、そんなに暴れん坊ですか?」
「ううん、そういうのじゃなくて……なんだろう、あんまりヤキモチとか妬かないよね、っていうか――」
ナタネが口を閉じるや否や、頭上でカア、とヤミカラスが鳴く。茜空の向こうにはふわふわと漂うフワンテの姿も見えて、風に流される風船を見るとなんとなく心が落ち着いた。
「つまり、ナタネさんの目から見た僕は誰彼構わず嫉妬するような狭量な男ってことですね?」
「ちーがーうーよ! もう、いじわるなんだから」
「えへへ……すみません、つい」
シラシメがへにゃりと笑みを浮かべると、ナタネは腕を組んでそっぽを向く。機嫌を損ねてしまったようにも見えるけれど、その実彼女はこんなことくらいで拗ねるような性格じゃない。たまに子供っぽい振る舞いをすることもあるが、こちらが話しかければどんなときでも答えてくれる、優しさと面倒見の良さを兼ね備えた人だ。
「僕、こう見えて嫉妬はしない性質みたいなんですよね」
「そうなの? それは、どうして?」
「どうして、って……うーん、そうですねえ」
隣を歩くナタネの手を、さりげなく、けれども力強く握る。突然のスキンシップにナタネは一瞬瞳を彷徨わせたが、周りに人やポケモンがいないことを確認したあと、ひかえめに握り返してきた。……ほら、やっぱり応えてくれる。
「ナタネさんが僕のことを愛してくれてるって、疑いようがないからですかね」
刹那、ナタネは顔を真っ赤にして顔を背ける。
その膨れた頬を見るに、これは先立ってと違って機嫌を直してもらうのに時間がかかりそうだが……しかし、それに対しての悪感情など微塵もない。むしろ、そうしてくるくると変わる彼女の表情を、シラシメはひどく好んでいる。
空よりも赤い恋人の頬を見ながら充足感と幸せを噛みしめる、そんな夕暮れのひと時だった。
「そうだ、最近できたアイス屋さんに寄って帰りましょうよ。もちろん僕の奢りで」
貴方は×××で『躾はしっかりとお願いします。』をお題にして140文字SSを書いてください。
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2025/09/14
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