ひとりで寝るのは好きじゃない。だから、タルタリヤが毎晩のようにわたしを抱きしめながら眠ってくれるのが、本当はすごく嬉しくて、安心して、すき。
でも、わたしはタルタリヤに「すき」と伝えるのがひどく怖い。あの日の記憶が脳裏にこびりついているのだ。わたしに対する興味関心のいっさいを捨て去った冷たい瞳は、今でもわたしのまぶたの裏にしっかりと焼きついていて、事あるごとにわたしの言動を縛っていた。
タルタリヤの優しくてあったかい笑顔や、「執行官」としての非情な横顔、あどけない寝顔――目まぐるしく変わる表情の数々を見ているくせに、今でもずっと、わたしはあの一瞬の瞳に囚われ続けている。
叶うなら、もっとたくさんのことを伝えたいのに。わたしを拾って、名前までつけて育ててくれた感謝の気持ちを、彼に直接、この口で言ってしまいたいのに。
けれどわたしの口はいつまで経っても言うことを聞いてくれなくて、憎まれ口ばかりを叩く。わたしが何を言っても笑って許してくれる、彼の優しさに甘えてばかりなのだ。
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あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『ぬくもり』です
#お題使ってみたー #shindanmaker
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2024/09/05