あたしの還る場所(セキ)

「ねえ、セキさんって生まれ変わりとかそういうの、信じる?」

 ――人間は死んだらどうなるのだろう。バクフーンは迷える魂をあるべき場所へ還すというが、還ったあとにはどうなるのか? そんな何気ない疑問をテルに打ち明けると、彼は事もなげに「また新しく生まれ変わるんじゃない?」と答えた。
 生まれ変わるとは、つまり新たな自分になるということだ。……ヨヒラは自分が好きではない。けれど、たとえ醜い自分を捨てられるとはいえ、セキのいない世界にわざわざその身を投げるつもりは毛頭なかった。
 人はいずれ死ぬ。そして、その先にまた転生の道があるなら、そのときもセキと一緒にいたい――そんな夢見がちなことばかり考えている自分が、ほんの少し恥ずかしかった。

「どうしたんだ、いきなり」
「少し前にね、テルくんとそういう話したの。人間は死んだらどうなるのかなって、バクフーンが魂を還してくれるっていうなら、その魂はどこへいくんだろうって――」

 ぽん。口を閉じるよりもはやく、セキの手のひらが優しく頭に置かれた。そっと見上げると彼はほんの少し淋しげな、けれども愛おしさを滲ませた笑みを浮かべていて、にわかに罪悪感が募る。
 きっと、よくない顔をしていたんだ。ごめんなさい、と続けると、セキは「謝ることなんか何もねえだろ」とからりと笑ってくれた。

「オレは、生まれ変わりとかそういう難しいことはわからねえけどよ。たとえ生まれ変わったとしても、おめえと一緒にいてえと思うぜ」
「うん……あたしも。――ねえ、セキさん」
「どうした?」
「生まれ変わっても、またあたしのこと見つけてね」

 ――約束だよ。どちらともなく小指を差し出して静かな契りを交わす。奇しくもその日はしとしとと雨が降っている、六月も半ばのことだった。

貴方は×××で『来世でもよろしく』をお題にして140文字SSを書いてください。

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2024/09/04