見えない、会えない、どこにもいない
※夢主が死んでる さしものフェルディアとはいえ、亡骸をそのまま置いといたらそう遠くないうちに腐っちまう。……陛下、せめて美しいままの姿でお別れを言って差し上げましょう――シルヴァンの、落ち着き払ったようでいてどこか揺れるような声色が、未だこ…
ファイアーエムブレム 短編(ディミトリ) 細氷に光る懐刀
小さなわがまま
ふたりっきりで休んでいるとき、ひどく甘えたで蕩けてしまうディミトリのことが好きだ。は今、誰もいない王の私室の中央に鎮座する寝台に寝転がり、愛すべき夫の体を優しく抱きしめている。 ツヤの戻ってきた髪を撫でていると心が安らぐ心地がする。指通り…
ファイアーエムブレム 短編(ディミトリ) 細氷に光る懐刀
たった二人の廓のような
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ファイアーエムブレム 短編(ディミトリ) 細氷に光る懐刀
寒さと熱さ
「お前を迎えに来たんだ」 そう言って微笑うディミトリは寒さで鼻を赤くしていて、肩にはちらほらと降ってきた雪がいささかではあるが積もっている。フェルディアでの積雪は特に珍しいことでもないが、それにしたって一国の王がこんなところに立ち尽くして待…
ファイアーエムブレム 短編(ディミトリ) 細氷に光る懐刀
とある静かな朝のこと
※朝チュン 「その……すまない。また傷を作ってしまった」 肩に触れる指は震えている。おそらく極限まで力を抑えているのだろう、そんなに気を遣わずとも壊れやしないのにと、は小さく笑ってディミトリの手に手を重ねた。 なだらかな肩には獣と見紛う歯型…
ファイアーエムブレム 短編(ディミトリ) 細氷に光る懐刀
咲ってほしいと思うから
花言葉というものを知っているか。それは、本の世界に度々出てくる少し詩的なお遊びだ。 今までの人生、はそういったものにあまり縁がなかった。花に気持ちを込めて普段言えない想いを伝える――そんな麗しいやり取りをかわすような友人も、親しい家族も居…
ファイアーエムブレム 短編(ディミトリ) 細氷に光る懐刀
雪は解け、草木はもゆる
「ねえ、ディミトリ。覚えてる? いつか私が、エーデルガルトに嫉妬していたって話をしたこと」 それは、爽やかな風が吹く夏のことだった。 フォドラの北方にあるフェルディアでは、夏といえど茹だるような暑さを感じることはない。ここは一年の半分以上寒…
ファイアーエムブレム 短編(ディミトリ) 細氷に光る懐刀
深層にかくして
――空が泣いているようだ。 そんな、自分らしくもない詩的な表現が口をついて出たのは、浮かれているせいなのだと思う。頭上にある青の外套が目の端に映るたび、私の心臓は親に褒められた子供のようにはしゃいでは跳ねた。 くすり。穏やかな吐息混じりの…
ファイアーエムブレム 短編(ディミトリ) 細氷に光る懐刀
待っていてね
※ネタバレ注意 --- 「セテス様、お願いがあるんです」 ファーガス神聖王国がフォドラを統一してから、おおよそ十年の月日が経った頃だった。 出会ったときからいっさい風貌の変わらない、今となっては義父のような存在である彼に、は粛々として申し出…
ファイアーエムブレム 短編(セテス細氷) 細氷に光る懐刀
どうしようもなく母であれ
※子がいるしネタバレもある「親の因果が子に報う」とは、がこの上なく、それはもう蛇蝎のごとく嫌っている言葉だ。父親にも母親にも色々と抱えるものがあるにとって、親の罪や振る舞いがおのれの人生にまで影響してくるだなんてとてもじゃないが許容できない…
ファイアーエムブレム 短編(アネット) 細氷に光る懐刀
君の姿は
自分たちはどこかよく似ていて、けれども全く持って違う種類の人間である。がドロテアと関わるとき、思うことはいつもそれだ。 直感めいたその認識は出会ったときから決して消えてはくれなくて、しかしそれを確かめる術も、はたまた撤回する方法もにはよく…
ファイアーエムブレム 短編(ドロテア) 細氷に光る懐刀
翠雨の節31の日
「ドゥドゥー、誕生日おめでとう」 王城の渡り廊下で起きた巡り会い。 出し抜けな祝辞と贈り物に、ドゥドゥーは目をまんまるにして固まった。あまりにも唐突すぎて驚きを通り越しているのだろう、に差し出された包みを何も言わずに流されるまま受け取ってい…
ファイアーエムブレム 短編(ドゥドゥー) 細氷に光る懐刀