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見えない、会えない、どこにもいない

※夢主が死んでる さしものフェルディアとはいえ、亡骸をそのまま置いといたらそう遠くないうちに腐っちまう。……陛下、せめて美しいままの姿でお別れを言って差し上げましょう――シルヴァンの、落ち着き払ったようでいてどこか揺れるような声色が、未だこ…

寒さと熱さ

「お前を迎えに来たんだ」 そう言って微笑うディミトリは寒さで鼻を赤くしていて、肩にはちらほらと降ってきた雪がいささかではあるが積もっている。フェルディアでの積雪は特に珍しいことでもないが、それにしたって一国の王がこんなところに立ち尽くして待…

待っていてね

※ネタバレ注意 --- 「セテス様、お願いがあるんです」 ファーガス神聖王国がフォドラを統一してから、おおよそ十年の月日が経った頃だった。 出会ったときからいっさい風貌の変わらない、今となっては義父のような存在である彼に、は粛々として申し出…

君の姿は

 自分たちはどこかよく似ていて、けれども全く持って違う種類の人間である。がドロテアと関わるとき、思うことはいつもそれだ。 直感めいたその認識は出会ったときから決して消えてはくれなくて、しかしそれを確かめる術も、はたまた撤回する方法もにはよく…

翠雨の節31の日

「ドゥドゥー、誕生日おめでとう」 王城の渡り廊下で起きた巡り会い。 出し抜けな祝辞と贈り物に、ドゥドゥーは目をまんまるにして固まった。あまりにも唐突すぎて驚きを通り越しているのだろう、に差し出された包みを何も言わずに流されるまま受け取ってい…