「幼い筆跡の手紙」
「ディルックさん、何を見てるんですか?」 寝室のベッドに腰掛けるディルックが書簡に目を通しはじめたのは、寝る準備を早々に済ませ、心地よいまどろみを待ちわびている頃だった。 疲れが溜まっていることを指摘されたおかげで、今夜ばかりは英雄業もお…
Admire 原神 文章 短編(ディルック)
まんまるちゃん
アカツキワイナリーの北部には、ふくふくの雪ヤマガラがたくさん生息している。住んでいる地域のせいか比較的人懐っこい彼らは、いつしかにとって顔馴染みの友人のような存在となっていた。「こんにちは」と挨拶すれば、元気よくさえずりを返してくれる。そ…
Admire 原神 文章 短編(ディルック)
三度目の正直
「犠牲」を視野に入れた頃から、ずっと脳裏に染みついて離れなかったものがある。数多あるそのなかのひとつこそが、他でもないの存在だった。 置いていかれてしまった自分にも、置いていく存在ができてしまった。置いていかれる者の苦しみを、他でもない自分…
三度目の正直 崩スタ 文章
あなたの好きな海だった(密)
まるで魔法のようだった。彼に抱きしめられたとき、ずっと抱え込んでいた膿が、重しが、ふわりと軽くなったのだ。 家族を亡くした過去は消えない。私は一生その傷と付き合っていくのだと思うし、あんなにも好きだった人のことを、愛の結晶である息子のこと…
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あの日のぼくにさようなら(太一)
永遠なんてないと知ったのは、初恋の女の子と会えなくなったあのときだ。あの頃の俺っちはあの子とずっと一緒にいられると思っていたし、いつかあの子をお嫁さんにして、幸せな家庭を築くんだって思ってた。でもすぐに離ればなれになって、俺っちは道を間違…
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本当はずっと(辿)
※本編8幕、バクステのネタバレあり--- 日本に帰ってくるのは何ヶ月ぶりだろう。生まれ育った温暖な気候は体によく馴染み、否が応でもここがおのれの故郷なのだということを実感させてくれる。通り慣れた花街道の香りはどこか懐かしくて、あの頃とは咲き…
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あなたを待っています(密)
「アネモネの花言葉って切ないよね~」 花瓶の水を捨てながら、思い出したようにが口を開く。いきなりなに、と至極まっとうな声を返せば、は頷きながらからからと笑った。「この前読んでた本に花言葉の話が出てきたんだよ、それで色々調べちゃったの」「………
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今までのぶんも(太一)
「昔通ってた幼稚園に咲いてたわ」 ふと足元に目を向けたが、おもむろにそう呟いた。どうしたの、と尋ねて彼女の視線を追ってみると、そこにあったのは白いプランターに咲き乱れる色とりどりのパンジーの花。演劇の聖地と呼ばれる天鵞絨町はそのぶん人の行き…
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呪いは伝搬してゆく(密)※
※R15くらい---「にしても、最近物騒ですよねー。毎日毎日、どこかしらで怖い事件が起きてたりするし……」「確かに、毎日嫌~なニュースばっかりかも。幸い天鵞絨町は、ここ最近目立ったことは起きてませんけど……」「ああでも事件といえばあれですよ…
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Photogenic(綴)
MANKAIカンパニーの脚本家として書かせてもらっている手前、そこに妥協は許されない。遊びじゃない。趣味でもない。これはれっきとした仕事である。お客さんの、劇団員の、スタッフの、監督の時間と金を浪費させてしまうのだから、俺はみんなの期待に…
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あざといポーズ(至)
「ッ、きゃあ!」 物陰から出てきた怪物に驚いたのだろう。は控えめな声をあげ、隣の至にしがみついた。 今はホラーゲームをやっているところだった。やっている、というよりは、プレイしている至の隣にが座り、そのさまを鑑賞しているといった具合である。…
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何日何年かかっても(咲也)
「オレ、ほしいものが出来ました」 意を決したようにつぶやく咲也くん。その目はひどく真摯でいて、けれども何かに怯えているようにも見えた。 まるで、親とはぐれて迷子になったような心細さが、今の彼にはあると思う。「いつか、そう遠くない未来、さんと…
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