短編(マサル)

チャンピオン・マサルの目撃情報

「いえ、れっきとした恋人ですけど」 臆することなく答えるマサルに、マイクを差し出すインタビュアーは目を見開いて呆気にとられていた。 もちろん彼女だけでなく、背後でカメラを構えたカメラマンや、若きチャンピオンに黄色い声をあげるギャラリーの群れ…

大丈夫だよ、ここにいるから

 ねえ、。ちょっとだけ体貸して――言うやいなやのマサルが背後から覆いかぶってきたのは、なんてことない昼下がりのことだった。 突然襲うずっしりとした重みに面食らうも、しかし、がそれを撥ねつけるようなことはなかった。ただ静かに彼を受け止め、おだ…

湯けむりの奥

 ――するり。 細い肩に指をすべらせてやると、くすぐったそうに身をよじる。少し前ならなにするの! と怒られていただろうに、ここ数年でぼくの突飛なスキンシップにもすっかり慣れてしまったようで、過剰に拒否されるようなことはなくなった。 少しだけ…

ハートアメざいく

「――ん、うん。わかった」 どこかくすぐったそうに肩をすくめるその姿には、「あのダンデを打ち倒した稀代の新チャンピオン」という謳い文句で日夜騒がれた際の威厳や風格など、微塵も感じられなかった。 もちろんそれは彼をくさした印象ではなく、まだま…

break time

※数年後設定 ---  チャンピオンとなって早数年。ぼくは利便を考えて、つい最近ナックルシティに引っ越した。 そらとぶタクシーといった交通手段こそあるが、それでもやはりチャンピオンの職務というのは思っていたより何倍も忙しく過酷だ。ひどいとき…