ファイアーエムブレム

花綻ぶ微熱

 草芽の色をしたは、さながら春の象徴であるかのような女性だった。 彼女がそこにいるだけで、周りに笑顔の花が咲く。マーニャ隊の仲間だけでなく、時には城下の市民までもが彼女にとっては友だちだった。 彼女がそこにいるだけで、皆の表情やまとう空気が…

交差

「……どうしたのよ、またそんなにぼうっとして」 セイレーン城の中庭にて、木陰の下で空を眺めていたときだった。天馬の羽音が聞こえた数分後、ひょこんとが顔を覗かせたのである。 シレジアの冷気に霞んだ空がいっぱいに広がった視界のなか、突然に飛び込…

もえる草芽の色をした、

 シグルド軍がシレジアに落ち延びてから、気づけば半年の月日が経とうとしていた。 寒冷な気候はシレジア以南で生まれ育った諸君に厳しく当たることもあったが、その無慈悲な冷たさもラーナ王妃の温かさによっていっさいが融解する。 苦難ばかりでままなら…

永遠のように(ジェローム)

 それは、ひどく穏やかな昼下がり。ミネルヴァちゃんとお空の散歩を終わらせて、ジェロームと二人、のんびりと過ごしていたときのことだ。「やっぱ、ジェロームの顔かな。できれば仮面は取っててほしいけど」 出し抜けに口を開いたわたしに、ジェロームはひ…

誓いの弓立(ジェローム)

 ジェロームがひどく優しい男であるということを、恋人であり幼なじみでもあるわたしは深く理解している。 彼は真っ当な感性を持った常識人だ。まあ、仮面の趣味やそのあたりは少し人と違ったものを持っているけれど……それでも彼が面倒見の良い優しい人間…

青と紅(クロム)

※死ネタ、息子もいる ---  凶刃が息子へ見舞われんそのとき、は半ば衝動的に駆け出していた。 それが息子のことを想っての行動なのかと問われたら、おそらくは返す言葉を持たないだろう。彼女はもはや限界だった。最愛かつ無二の幼なじみを目の前で亡…