初恋、初キス、初嫉妬

「妬いてなんかないわ」
 そう出し抜けにつぶやくブーケはぷくりと頬を膨らませている。まごころ雑貨店の店先にて、彼女はここぞとばかりにダグへと視線を突き刺していた。
 どことなく呆気にとられたダグに思い切り詰め寄ってみるが、しかし彼は依然として身に覚えがないようである。何のことダ、と答えるダグにブーケの感情はまた大きく波打つが、白を切っているわけでもない彼の様子に勢いだけがしぼんでいく。
「べ、別に……その、あなたがフレイと仲良さそうにしてたからって、嫉妬したとかそういうのじゃ……」
「ア……? ……なんだなんだ、お前そんなにオレのことが好きなのカ? いや~愛されてるねえ、照れちまうゼ」
「うっ……うるさいわね、ダグのくせに……!」
「くせにとは何だ、くせにとハ!」
 一瞬漂いかけた甘い空気はどこへやら、売り言葉に買い言葉とはまさにこのことだろうか。
 騒ぎを聞きつけたフレイが仲裁に入るその瞬間まで、二人のどうしようもない痴話喧嘩は続いてしまったのだった。

 
嫉妬の日!
20210410