バルーンフラワー(ディルック)

 時おり、ハーネイアが耐え忍ぶように両目をきゅ、と瞑るときがある。はじめのうちは僕の言動で怖がらせてしまったか、もしくは何か嫌なことを思い出させてしまったのかと申し訳なく思っていたが、今しがたそれがおおきな誤解であることが判明した。

「ば……爆発しそうに、なっちゃうんです。しあわせなのとか、嬉しいとか、色んなものがたくさんで」
「……僕が怖いわけではないんだな?」
「まさか! わ、わたし、ディルックさんを怖いなんて思ったこと、ないです……っ」

 自分の言動で僕を不快にさせたと思ったのか、ハーネイアは撤回の言葉とともに僕に身を寄せてくる。ぎゅう、と抱きついてくる両腕は以前より躊躇いなく伸びてくるようになっていて、その変化を感じ取れるだけですでに気分がいい。

「い……いやな気持ちにさせてたなら、ごめんなさい。覚悟を、決めてるだけ、なので……!」
「覚悟……?」
「はい! しあわせすぎて死んじゃわないように、気をしっかり持つための覚悟、です……!」

 みるみるうちに体温を上げていく体から、よくわからない理論が飛び出してくる。こんな様子を見てしまえば、この子がいっぱいいっぱいになっているという事実に納得せざるを得ないだろう。
 そっと背中を撫でながら「少しずつ慣れていこうね」と言うと、ハーネイアはまるで空気の抜けた風船のような声で「はひ……」と答えたのだった。

貴方は×××で『腹を括れ』をお題にして140文字SSを書いてください。

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2024/09/20