夜もすがら(クロード)

 べつに、自分たちの相性が悪いとか、仲が悪いだなんてこと、今まで思ったことはない。……否、もしかするとほんの少しよぎったことはあるかもしれないが、それを自分たちの関係のすべてとしたつもりはいっさいなかった、はずである。
 しかし、最近たまに思うのだ。自分たちは、もう少し距離を置いてみたほうがいいのではないかと。無論、別れるとか国に返すとかそういった別離を選ぶわけではなく、ただ、近づきすぎたきらいがあると思い至っただけなのだ。
 もう少しだけ、離れた場所から広い視野で彼女のことを見てみたい。以前ヒルダからもらった助言のように、ウィノナという人間にたいして凝り固まった認識を、まだまだ砕いて平たくする必要があるのではないか、最近そう思うことがぐっと増えたのだ。
 誰よりも愛し、尽くしているはずなのに、どうにもうまく伝わらないことがままある。これが倦怠期というやつなのだろうか? 慣れない土地で暮らすウィノナを自分は支えきれていないのかと、頭を悩ませる夜はもはや習慣化していた。
 ……ああ、俺は、こんなにもお前のことを愛しているのにな。彼女に向けるこの狂おしい想いを、ほんのひと匙だけでもその口に入れてしまうことができたら――そうすれば、自分たちの関係はもう少しだけ、まろやかなものになれるかもしれない。
 そんな答えのないことばかりを考えながら、隣で眠るウィノナのあどけない寝顔を、静かに見つめる夜もすがらだった。

あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『狂おしい感情を表せられたら』です

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2024/09/19