言えるわけがないんだ(コレイ)

「じゃあ師匠、先生! あたし、そろそろ行ってくる!」

 太陽のような笑顔を振りまきながら、コレイは意気揚々とパトロールに出かけていった。近頃はこうして一人で遠くまで行くことも増えて、俺たちとしては嬉しい限りだ。

「――先輩、本当に嬉しいと思ってるの?」
「おッ……おまえ、急に人の心を読むなよ」
「わかりやすく顔に書いてあるんだから、誰にでもわかっちゃうと思うけどね」

 ふん、と鼻を鳴らしながらティナリは簡単に言ってのける。しかし、今までこんなふうにズバズバと心中を言い当てられたことはほとんどなかったので、やはりこの後輩の察しがいいだけだと思うが――

「俺はいつまでも『頼れる先生』でいたいんだ」

 言いながら、俺は抜けるような青空をぐっと見上げた。ぬるい風は思いのほか爽やかに俺たちの髪を揺らし、踊るような草の香りが、スメールという国を――否、テイワットという世界の広さを強く感じさせる。

「あの子はもっと広い世界を生きていくべきだからな。俺はそれを見守るだけさ」
「そんなしみったれた顔して?」
「はは……そんなはっきり言ってくれるなよ」

 これみよがしなため息を落として、ティナリはさっさと戻っていった。どうしようもない俺の物言いに呆れてしまったのかもしれないが、ここであーだこーだ言わないのが彼の良いところだ。

「……言えるわけないよなあ。行かないでくれなんてさ」
 

貴方は×××で『言えるわけがない』をお題にして140文字SSを書いてください。

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2024/08/17