※Z-Aクリア後ストーリーバレ
※ふわっと朝チュン
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ふと気がつくと、ふわふわとした何かに全身を包み込まれていた。夢でも見ているのだろうか? チルタリスに抱きしめられているかのような文字通りの夢心地は、疲れきったガイの心身を癒やしてくれるようだった。
近頃はクエーサー社の次期社長として研鑽を重ねていることもあり、こんなふうに安らいだ気持ちになるのは久しぶりだ。……叶うなら、ずっとこのままでいたい。柔らかくて、あたたかくて、ほんのりいい香りがして。ずっとこうしていられたら、もう何も望むことはないのに――なんて思ってしまうのは、おのれの立場を思うとあまりにもワガママだろうか。
しかし、夢は結局「夢」である。その感触に浸っていたい気持ちとは裏腹に、ガイの意識はだんだんと覚醒への道を歩みはじめていた。……目の前にあるのは一筋の光だ。それに導かれるようにして、少しばかり憂鬱な朝に身を投げる――
「……んぁ」
――ふに。目が覚めたはずのガイは、なぜだか夢のなかと同じぬくもりに包み込まれていた。
柔らかくて、あたたかくて、ほんのりいい香りのするそれ。ずっと触れていたい魅惑的な感触の正体に気づいたのは、頭上からアルトラの声が聞こえてきたときだった。
「あ、起きた? おはよ〜」寝起き特有のかすれた声に、ガイの心臓は跳ねるような音を立てる。思わず飛び起きてベッドの端まで飛び退いたガイに、アルトラの怪訝そうな視線が飛んできた。
「どっ、どわッ……!? アルトラ、お、ッオマエ――」
「バカ、朝っぱらから大きい声出さないで。他のみんなが起きちゃうでしょ」
「わ、悪い――じゃなくて、何……!?」
ピンク色のスマホロトムを収納して、アルトラはのろのろと起き上がった。その様子を見るに、おそらくガイよりも先に目を覚ましていたのだろう。
……もしかして、オレが起きるのを待っててくれたのか? あんなふうに、抱きしめたまま? 先立っての感触を思い出して再びガイの心臓が跳ねる。気を逸らすために視線を動かすも、彼の目の前にいるのは薄着で無防備なアルトラだ。
正直、目のやり場に困る。なんとか気を落ち着けるために見慣れたホテルの内装に目をやるものの、どうにも効果がないみたいだ。忙しないガイの視線に気づいたのか、アルトラは依然としてかすれた声のままくすくすと笑う。
「初めて見たわけでもないくせに。ガイはずっとウブだね〜」
「う、うるさいな! ……ふ、ふいうちだとまた違うんだよっ」
「そんなもん? ……んふふ、そっか、そうかもね」
くあ、とあくびを噛み殺すアルトラが、端っこでたじろぐガイへとにじり寄ってくる。そのままゆっくりと手を取って指と指を絡ませてくるのだが、その動きは昨夜のことを思い出させるには充分すぎた。
……わかっているのだ、これがアルトラの「冗談」だと。甘ったるい顔のタブンネに何度遊ばれたことだろう。年上かつ何倍も経験豊富な彼女はたびたびこうしてガイのことをからかい、「かわいいね」と愛でてくる。別に嫌ではないのだが、たまに無性に悔しくなってしまうのも本当だった。
「ね、昨夜はよく眠れた?」
「おう……久しぶりにぐっすり眠れて最高だったぜ。起きる直前までほとんど夢も見なかったしな」
「そっかそっか、よかった」
油断していた手を引かれて、そのままアルトラの胸へと顔面から飛び込むハメとなってしまう。思い切り抱え込まれているせいで少々息苦しいけれど、この感触は妙に落ち着いた。
此度の安眠もこの柔らかさによってもたらされたのだろうから、もはやガイに抵抗する理由など存在しない。
「疲れたらいつでも帰っておいでね。わたしたちはいつだって、あなたのこと待ってるからさ」
#novelmber 28.ふわふわ
2025/11/02
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