※直接的な単語が出るので注意
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「そういえば、キョウヤはモミジリサーチだいぶ進んでるんだっけ?」
夜遅くに帰ってきたホテルZのロビーには、一人でスマホロトムを眺めているキョウヤの姿のみがあった。カウンターにもたれるその居姿はひどく洗練されていて、このミアレという街をもってしても、道行く人間いっさいの視線を奪ってしまいそうである。
ふわついた頭で帰宅の挨拶をしたあと、上記の質問を投げかけた。理由は大したものではなく、さっきまで一緒に飲んでいた友人とモミジリサーチの話をしていたからだ。
キョウヤはわたしのほうに視線を移し、ちいさく頷いて微笑む。
「ああ、頑張ってるほうだと思うよ。ただ、これがなかなかしんどくてさ」
「うーん? ……どれぇ?」
キョウヤの隣に立ち、スマホロトムの画面を覗く。見慣れたリサーチの項目はわたしのものより何倍も進んでいて、彼の熱心さが伝わると同時に、モミジリサーチをここまで進める人間がいるのかと驚愕の念が湧く。
キョウヤの指差す項目を見て、わたしは思わず「げえ」と声をあげてしまった。わたし自身これは積極的にこなしているつもりだったけれど、最終的にここまでいくのか……
「ポケモン勝負に千回勝利、ね……モミジさん、こんな無理難題押しつけてくるんだ」
「ね。これ一個にいったい何ヶ月かかるんだか」
肩をすくめて笑う横顔を見ていると、ふと妙ないたずらごころが芽生えてくる。
それは、もしかするとお酒のせいなのかもしれない。アルコールの抜け切らないままのわたしは、本来あるべき理性を夜の街に溶かしてきたみたいだ。
いくら大人びているとはいえ、キョウヤはまだ子供である。そんな彼にこんなことを言うのは大人として倫理に反しているのだろうけれど、帰り道に見かけたバトルゾーンでの一幕が、わたしの心に嫌な色の火をつけたらしい――
「わたしとのセックス千回じゃダメなのかな? なーんちゃって――」
――ぴくり。カウンターに添えられていた指先が跳ねるのを、わたしの目は見逃さなかった。キョウヤの淡いアッシュブラウンが、熱をもたげる瞬間も。
「アルトラ」
まっすぐな瞳に、射抜かれてしまうようだった。
気づけばわたしの手はキョウヤの指先に絡めとられていて、からみつくそれはわたしの自由を許してくれない。
じり、と距離をつめられる。今夜はみんなZAロワイヤルに出ると言っていたし、どうやらAZさんとフラエッテも既に休んでいるらしい。……つまるところ、わたしたちが部屋で何をしようと、それに気がつく人はいない。
「オレ、本気にするよ。……いいよな」
答えるよりも先に手を引かれ、わたしたちは古めかしいエレベータへと足を踏み入れる。
結果、わたしはしばらくのあいだ酒を飲むのはやめようと固く誓うことになるのだけど……その情けない誓いを立てたのは、202号室のベッドの上で気を失う三秒ほど前のことだった。
2025/10/28
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