※Z-Aのネタバレ有
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――遥か彼方のカロス地方はミアレシティで開催されるという「大ヒスイ展」。ヨヒラがその名前に反応したのを、セキは決して見逃さなかった。
ニュース番組にヨヒラの目は釘づけだ。食べかけの食パンを皿に置く余裕もなく、ぼんやりと口を開けたまま、まんまるのたれ目は必死にテレビの文字を追っている。……嫌な予感がしてしまったのは、仕方ないことだと思いたい。
「気になるのか?」愛し子の異変を無視できなかったセキは、苦い顔を隠しながら訊ねた。おのれが集中している自覚がなかったのだろうか、ヨヒラはセキの声にびくりと肩を跳ねさせて、忙しなくまばたきを繰り返す。
「えっ……あ、あたし、そんなにニュース見てた?」
「おう。そりゃもう、おめえの食パンをヒノアラシが狙ってるのにも気づかねえくらいにはな」
「うそ!? も〜、ヒノアラシ! 朝ごはんはもう食べたでしょお」
最近、ヒノアラシは前にも増して食欲旺盛である。ヨヒラは「そろそろ進化するのかな?」などと言っていたけれど、セキの目には単なるくいしんぼうくらいに映っていた。
どうやら、秋という季節はポケモンの食欲すらも刺激してしまうらしい。
「行きてえのか? その……『大ヒスイ展』によ」
「う〜ん……気にならないって言ったら嘘になるかな。ヒスイってシンオウ地方の昔の名前でしょ? あたし、シンオウの人なのにそのへん全然知らないし」
「そのためだけにカロスまで行きてえと」
「……まあ、行けるのなら。でもそうだね、さすがに遠いし、シンオウにまつわる展示会ならそのうちこっちでもやってくれたりするかな」
あからさまにしょぼくれたまるい頬を、セキが無下にできるわけもない。はあ、と盛大なため息をついて、セキはヨヒラにひとつ訊ねた。「おめえ、いつがあいてんだ?」と。
途端、灰色の瞳はまばゆいほどの輝きを湛える。……これだ。この目に、オレはいつも負ける。
「連れてってくれるの……!?」
「まあ、おめえがそんなに行きてえならな。オレも気になるっちゃ気になるし、たまには二人で旅行もいいだろ」
「やったあ! えへへ、セキさんだーいすき!」
ぴょん、と抱きついてくるヨヒラを受けとめながら、セキはおのれの現金さに苦笑いを浮かべる。「大好き」なんて言われた日には望みすべてを叶えてやりたくなる、それが男の性というものではないか。
ヨヒラがヒスイのことを思い出すのは避けたいが、だからといって無理に遠ざけるわけにもいくまい。仮に思い出したとしても、おのれがカバーしてやればいいのだ。ヒスイでの結末はハッピーエンドとはいかなかったけれど、とはいえ自分がヨヒラを精いっぱい愛していたのは事実だし、それを再び余すことなく伝えられる自信もある。
「つってもまあ、だいぶ遠出になるからな。親御さんやアニキにはちゃんと伝えておくんだぜ。あと、ヒノアラシやニンフィアのことにもきちんと気を配るようにな」
「はあい!」
時系列ガン無視なのでボツにするつもりだったんですけどせっかく書いたのであげます(貧乏性)
2025/10/22
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