※手紙の内容バレあり
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『――気が落ち着くのは良いんだけれど、俺、こんな調子で強くなれるのかな?』
二通目の手紙は、一通目のときとほぼ同じ時刻に届いた。
それは奇しくも――むしろ当然と言うべきか――信濃くんを見送ったのと同じ頃で、あたしは昨日よりはまだ余裕のあるメンタルでもって、タイマーのようなそれをしっかりと受け取る。
今日の手紙に書いてあったのは、信濃くんがかつての主に拾ってもらえたということと、そこでの暮らしがひどく落ち着くということ。
彼が路頭に迷わず済んだのはいいのだけれど、あたしは安心したと同時に、彼を拾ったその人にひどく興味をそそられた。
――酒井忠勝。学生時代の朧気な記憶のなかにあるその名前は、そういえば当時仲の良かった友だちが推していたゲームにも登場していた気がする。あれは確か日本史を題材にした恋愛ゲームだったと記憶しているけれど、実のところあたしは歴史物にはあまり食指が動かないので、ちゃんと触ったことはなかった。
歴史物に興味関心のないあたしが、どうしてこんなことをやっているんだろう。我ながら少し不思議だけれど、理由としてはシンプルに才能を見出されたからだ。閉塞した日常に嫌気のさしていたあたしは、突然やってきた政府の人間の申し出を受け入れ、ここで審神者として働くようになった。
色々と悩みごとも多いけれど、なんだかんだあたしはここでの生活を気に入っている。制約こそ多いはずなのに、家にいた頃より何倍も自由で息がしやすいから。
「よくよく考えたら、あたし、信濃くんのこと何にも知らないんだね」
まるで語りかけるような調子で出てきた独り言は、誰の耳に届くこともなく部屋のなかで溶けていった。
昨日の手紙に書いてあったあなたの名前の由来って、いったい何なんだろう。そして、今回あなたの手繰り寄せた「縁」の持ち主である酒井忠勝は、どういった人なんだろうな。
……知りたいな。ちゃんと、信濃くんのことをわかりたい。彼がそう在る理由や由縁を、ちゃんとこの頭のなかに叩き込んでおきたい。
あなたが修行に出ている三日間で、あたしも少しは成長できるかな。私室に設置しているゲーミングパソコンに目をやりながら、あたしは信濃くんからの手紙を丁寧に畳む。
昨日と同じく引き出しにしまい込もうかとも思ったが、今日はやめにしておこう。……なんとなく、見守っていてほしかったからだ。この手紙がそばにある限りあたしは信濃くんの存在を、彼の頑張りを感じられる。そして、その優しい視線があれば、あたしも何かを得られるような気がするのだ。
「よぉ〜し……帰ってきた信濃くんに、あたしのかっこいいところも見せちゃおっかな!」
ふん! と得意げに鼻を鳴らして、あたしはパソコンのほうへと向き直る。
――数分後、作戦会議の予定をすっかり忘れていたあたしのことを、んばちゃんが迎えに来てくれるまで。
2025/10/16
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