「よぉ〜し……それじゃあ、ロズレイド、キノガッサ、モジャンボ! それからみんなも、協力お願いね!」
ナタネの音頭に声をあげるポケモンたちは、それぞれの目的を果たすために四方へと散っていく。
ロズレイドはくさポケモンたちを集め、床をピカピカに磨いたり、飾りつけをしたりと、彼らの指揮をとっている。対するキノガッサやモジャンボは電飾の明かりを灯したのち、外にいるポケモンたちと軒先や庭を掃除する予定だ。
彼らを見届けたナタネの後ろに続くのは、意外にもシラシメ のゴースト、グレープである。はじめこそ彼女に怯えきっていたナタネだが、共に生活するうち、気づけばこうして作業を頼めるくらいには打ち解けていた。今回は器用で繊細なゴーストに、一番大切な役目を頼もうとしている。
「あなたには、最後の仕上げを頼もうと思ってるの。いーい?」
ナタネが訊ねると、ゴーストは何度か瞬きを繰り返したあと、満面の笑みで応える。その笑顔はナタネにも伝播し、ちょうど横を通りすぎたロズレイドの口元も緩ませた。
ご機嫌なゴーストを引き連れて向かうのは、いつもより賑やかな様子のキッチンである。ナタネは最近買い替えた冷蔵庫を開き、そこの奥に眠るとっておきをゆっくりと取り出した。
「じゃじゃーん! これ、今年のシラシメ くんの誕生日ケーキなんだ。グレープには、このケーキにロウソクとプレートを刺してもらいたくて」
たくさんのフルーツやきのみが盛りつけられたホールケーキに、ゴーストの目も釘づけである。ナタネの手にあるのは年齢を表した数字のロウソクと、「誕生日おめでとう」と書かれたライチュウ型のチョコプレートだ。今年は少し奮発して、ヨスガシティの有名なパティシエに特注で作ってもらったのだ。
何を隠そう、今日は愛するシラシメ の誕生日なのである。共に暮らすようになって迎える四回目の誕生日なのだが、あいにくと当のシラシメ は休みをもぎ取ることができず、泣く泣く出勤していった。ナタネは先々月から今日は休みだと伝えていたため、問題なく家で過ごすことができるのだが……
せっかくの誕生日に仕事へ向かう背中を見送るなか、一抹の寂しさを感じたのは嘘じゃない。しかし、一人なら一人でやれることはたくさんあるはずだ。どうせならサプライズ的に思いっきり家を飾りつけて、クタクタになった彼を迎えてやろうではないか――そうして切り替えたナタネがポケモンたちに協力を仰いだのが、つい先ほどのことである。
シラシメ のことだから定時退社はしっかり勝ち取ってくるだろう。ゆえに、事態は短期決戦が求められる。
「あなたが手を加えてくれたって言ったら、シラシメ くんもすっごく喜ぶと思うんだ」
ナタネがそう伝えると、ゴーストはもじもじと照れくさそうにしながらも、力強くうなずく。それに答えるようにガス状の体を撫でる真似をしてやると、ゴーストは嬉しそうに身を寄せてきた。
見た目よりも愛嬌のある彼女を、ナタネはひどく可愛がっている。
(よぉし、今年も盛大に祝ってあげなきゃね……!)
シラシメ が帰ってくるまであと数時間。ナタネたちのバトルは、まだまだ始まったばかりである――
夢主の誕生日兼わたしのユメカツ記念日でした。おめでとう夢主、おめでとうわたし
2025/09/16
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