「お前なあ……もう少し、自分の体を大切にできないのか?」
左腕に巻かれた包帯を見ながら、クロードは深いため息をつく。どうせ触れさせてもらえないのだから手を伸ばすことは諦めたが、当の本人は相も変わらず、いっさい表情を動かさない。
「あなたに言われたくはないわ。昨夜も徹夜してたらしいじゃない」
「怪我と徹夜は違うだろ」
「同じことよ。自分の体に無茶をさせている、という点ではね」
――自分が無茶してる自覚はあるのかよ! 口をついて出そうになった文句を、すんでのところで飲み込んだ。下手なことを言うとまた火がついてしまうからだ。
此度、ウィノナは斥候として敵場の偵察に出ていた。任務自体は滞りなく進んだものの、帰路でゴロツキ集団に出くわしてしまったのだという。そして、そのちいさな競り合いの最中、手負いの味方を庇って手痛い一撃を食らってしまった結果が、この赤く滲んだ包帯なのだとか――
「肉を切らせて骨を断つ。これが一番効果的だったのだから仕方ないわ。実際、そのおかげで被害も最小限で済んだもの」
きっと、ウィノナは気づいていない。目の前のクロードがどんな顔をしているか。否、もしかするとすべてを察したうえで、何も知らないふりをしているだけなのかもしれない。
……そうでなければおかしいのだ。こんなにも的確かつ効果的な方法でクロードの心中を嵐のようにざわつかせるなんて、きっと並の人間ではなかなかできないことだから。
彼の怒りが爆発するのは、きっと、そう遠くない未来の話である。
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貴方は×××で『若いときには無茶をしとけ』をお題にして140文字SSを書いてください。
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2024/09/17