かなわないなあ(マサル)

 わたしは、今の今までたったの一度もマサルに勝てたことがない。ポケモンバトルはもちろん、日常生活とか、そういう面でも。
 だから、落ちこぼれだったかつてのわたしは、ジムチャレンジの道中でマサルと出くわしてしまうのが毎回怖くて仕方なかった。同じように、彼の連れていたヒバニー――今はもう立派なエースバーンになっているけれど――も、一時期はそのシルエットを見るだけで冷や汗がとまらなかったくらいだ。
 けれど、こうしてマサルと一緒にいられるようになったわたしにとって、エースバーンはかけがえのない仲間かつ、唯一無二の家族となった。たまにマサルの代わりにお留守番をしてくれるし、番犬ならぬ番兎として、我が家のことを守ってくれる。頭をなでるたび人懐っこくすり寄ってきてくれる姿を見ると、かつて自分がこの子に対して怯えていたことを申し訳なく思ってしまうくらいだ。
 ゆえにわたしは、近頃少しだけこの子に甘い。たまにマサルに内緒でアメざいくをあげたりするし、マサルの留守中、一緒にお昼寝することだってある。
 そしてここしばらく、わたしたちの仲にやきもちを妬いたマサルもまた、今まで以上に甘えん坊になっていたりするのだけど――その嫉妬しいな恋人を見ることもまた、わたしの密かな楽しみなのである。

あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『炎』です

#お題使ってみたー #shindanmaker
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2024/09/09