はたちをこえて(グリーン)

「ほ~れコエダ、キスしてやんよ」
 揶揄するようなグリーンの声とともに、指先が唇から離れる。弾けるようなその所作はカロス仕込みというかなんというか、彼の整ったルックスもあって非常に絵になる――のだけれど。
「やっだぁ、グリーンさんの投げキッス! これは超絶レアモノですよね、わたしもお返しします~!」
 コエダは赤ら顔のまま、先程グリーンにもらったものと同じ動作を繰り返す。リップ音が響くたびに2人はけらけらと腹を抱えて笑った。いわゆる酒の席である。
 出会った頃はお互い子供だったくせに、今やこうして飲酒の許される年になった。なんかしみじみするよな、そうですね、そんな趣のあるやり取りの末にあったのは、かように浮かれたおふざけの一幕であった。

 
20180415