そんなふうに鳴いたって(レッド/グリーン)

「コエダを見てると、色んなことがしたくなるんだ。コエダが『してほしい』と思うことも、ぼくがぼくのためにやりたいと思うことも、本当に、何でも。触れたい、キスしたい、抱きしめたい、隣にいたい。コエダの全部をぼくだけが占められたらいいのにって、いっつも、ずうっと、考えてる」
 コエダの寝顔を眺めながら、レッドはぽつりぽつりと落とすように呟いた。
 口下手ゆえに口数の少ない幼なじみが饒舌に心中を語るすがたに、グリーンは彼の想いの強さと、無視の出来ない恐れを覚える。背筋が確かに粟立つのを感じ、自分はまたこの男に負けるのかと心の奥深くにある劣等感を刺激されたことに気がついたのは、すっかり日が暮れてしまった帰り道のことだった。
 ヤミカラスのなきごえだけが、胸の底にひんやりと横たわる沈黙を慰めてくれている。

 
20180408