いいやつだね

「同期に白田がいてくれて本当によかった」
「え、どうしてですか?」
「あいつがいると良いカモフラージュになるんだ」
「あ……」
「白田は本物の女より可愛い。だからあいつより背が高くて顔立ちの冷たい僕は、相対的に『中性的なジャック』でいられたんだ」
「なるほど……」
「海堂先輩には言われたこともあるけどね、『雛杉はジャンヌとして育てるべきではないか』って」
「希佐ちゃんのときと同じですね……」
「そう。でも僕はジャックがいいですって言ったんだ、いつか組んでみたいジャンヌがいるからって」
「フミさんのことですか?」
「うん。で、まあ……僕に迷いがないのがわかったのかな、そう主張したらすぐに納得してくれたんだ。理由があるなら全力で応援しよう! みたいな感じでさ……稽古までつけてくれて」
「海堂先輩らしいですね……」
「だろ? まあ、その応援も虚しく結局は無理だったんだけど。僕と高科先輩じゃあ住む世界が違いすぎた」
「雛杉先輩……」
「そんな顔するなよ、僕と高科先輩が組んでたら今の僕たちはなかったかもしれないだろ」
「うっ」
「喜ぶくらいでいいよ。あー雛杉先輩が失敗してくれてよかった! って」
「そんなこと言いません!」
「そう? ……いいやつだね、君は」
「いっ……いいやつの自信はないですけど、人の不幸を笑うようなことは絶対にしませんよ。……多分」
「ふふ……うん、そう。……やっぱりいいやつだよ、君は」

 
20210424