野蛮な人間のつもりはないが、コレイの笑顔を奪うような存在が現れたら積極的に払っていくと決めている。コレイには誰よりも幸せでいてほしいし、これから先の未来、不要な苦しみにあうことなく過ごしてほしいと願っている。
しかし、だからといって過干渉になりたいわけではないのだ。コレイにはコレイの人生があって、コレイなりの目的や理由がある。彼女の意志を尊重しつつ、その隣に立っていられたら俺はそれで満足だ。
喜ばしいことに、最近のコレイは少しずつながら臆病の皮を脱ぎ捨てつつある。おどおどと言葉に迷うことが減って、積極的に人間と関わるようになった。コレイの世界はどんどんと広がり、交友関係もすっかり広がっている――
「えっと……じゃあ、コレイさん。村の案内、お願いしてもいいですか」
「もちろんだ! あたしにできることなら、何でも言ってくれ……!」
まさに今、コレイはガンダルヴァー村にやってきた旅行者を案内しようというところだ。見習いレンジャーとして、彼女は胸を張りながら必死に役目を全うしている。
しかし、そのひどく微笑ましくて感慨深い光景を、旅行者のコレイに向ける視線が邪魔しているように見える。彼はどこか浮ついたような目でコレイのことを見ながら、時折り熱っぽいため息をついているのだ。
彼のため息に関して、俺が抱くのは共感と嫌悪である。コレイの笑顔はひどく眩しいし、心を奪われるのもうなずけるが――しかし、他の人間がコレイに向けて過ぎた好意を抱くことはいただけない。無理くり彼らを引き剥がすようなことはしないが、しかし、そう簡単に許してやるつもりもない。
「それで、コレイさん――って、ひ……!」
「……? どうしたんだ、何かあったのか?」
「い、いや! ななななんでもないです、けど……!」
旅行者は俺と目が合った途端に顔を青くして、ちいさく肩を跳ねさせていた。
俺はコレイがこちらを向く前に笑顔を作り直し、ゆっくりと二人に近づいていく。俺が一歩を踏み出すたびに旅行者はちいさく息を呑み、どんどん血の気を失っていった。
「先生、来てくれてたんだ! あたし、これからこの人を案内しようと思ってて……」
「ああ、行ってらっしゃい。頑張ってくるんだぞ。……あなたも、うちのコレイをよろしく」
「ひぃ……!」
俺が肩に手を置くと、旅行者はとうとういっさいの血の気をなくしてしまったようだった。優しいコレイは彼の体調を心配していたが、特に問題はないと伝えてやると首を傾げながらも納得している。
決して、この子に変な気を起こしてくれるなよ――俺の気持ちが伝わったのか、旅行者はコレイと適切な距離を保ってくれるようになった。俺は再び笑顔を作り、連れ立って歩く二人の背中を見送ったのだった。
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2024/10/28
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