きみがため

ちょっとやらしい、現パロ

 
「おお……」
 シャツのボタンに手をかけたクロードが数拍の後に感嘆の声をもらす。その目はどこか少年のようにきらきらとしていて、今まさに臨んでいる行為とのギャップに少し笑いそうになった。
 彼の目に映っているのは先日買ったばかりのフロントホックのブラジャーで、それは彼の瞳によく似た緑をしている。造りはまだしも色は少しやりすぎかとほんのり羞恥心が芽生える気もしたけれど、緑はもともと好んでいる色なので支障はないだろうと思い直した。
 以前こうして体を重ねたときもそうだったのだ。初めて見たのかどうかは知らないが、あのときの彼はウィノナがたまたま身につけていたフロントホックのブラジャーをいたく気に入ったらしかった。
 普段もウィノナを脱がすときはひどく楽しそうな顔をするのだけれど、あの日ばかりはとりわけワクワクした様子で手を出してきたように思う。なぜなのかと理由を訊いてはみたが答えは至極単純なもので、「外した途端に胸が露わになるのがやらしくて最高」ということだった。
 浮き足立った彼の指先は少々性急にも感じられたけれど、あんなふうに喜ぶすがたを見てしまってはダメなのだ。クロードは感情が読みづらい男であって、だからこそ分かりやすく波を見せられると従わずにはいられなくなる。強要されているわけでもないのに、ウィノナの心や体は無意識のうちに彼のためにと動いていってしまうのだ。
 だから気づけばランジェリーショップで手に取るのはフロントホックのものばかりになっていて、自分はこうして彼に染められてしまうのだなと、脳みその隅っこで自嘲したのがなんとなく遠い日のように思う。別にあれから悠久の時が経ったわけでもないのに。
 ただ、胸元で楽しそうに微笑う彼のすがたを確認するたび、ウィノナの胸を占めるのは安堵感と愛おしさばかりなのであった。

 
ツイッターで見た話に興奮した
20200914