ルーンファクトリー

眠れない夜はいつも雨

 その日、マウロは宝探しに励んでいた。否、宝探しと言っても「ヴィアトレーアの心臓」にまつわる冒険ではなく、風と直感の赴くまま飛空艇を乗りまわし、春の里から夏の里に向かう道中の、とある浮き島に足を運んでいただけだ。 此度のターゲットは七変化島…

「やっぱりすごくかわいいよ」

「アレスくんってさ、キスするときずっと目開けてるよね?」 余韻に浸る暇もなく、唐突な問いが投げかけられる。昼休憩のわずかな逢瀬のなか、恋人らしく身を寄せ合いながら何度も口づけを繰り返す最中のことだった。 上気した頬をそのままに何食わぬ顔で問…

凍て咲きの紫

※数年後、捏造注意 --- 「おはようございます、さん。そして、お誕生日おめでとうございます」 春月24日の朝、は祝福と共に目を覚ました。寝起きの霞んだ視界のまんなかには、こちらを覗き込むフブキの微笑みが映っている。「……ありがとう」挨拶よ…

であれば、まずは……

※メインストネタバレ注意 --- 「さんと、本当の姉妹のようになりたい……?」 フブキがクラリスとの談笑に花を咲かせていたのは、春の里、いろは茶屋でのことだった。時刻は午後二時、里の気候も相まって眠たくなってくるくらいの頃合いである。 店先…

これがいわゆる向上心

 わたしにとって、「鍛冶屋」は旅の醍醐味トップスリーに君臨するほど重要だった。理由としてはひどく単純で、わたしのおじいちゃんが町で一番の鍛冶屋さんだったからだ。 物心つく前から鉄を打つ音を聞いていたし、その過程で様々なことを教えてもらった。…

雪に混じる

※メインスト特大ネタバレ注意 ---  冬の里の夜は寒い。けれど、この寒さがどこか心地よいのも事実だった。 フブキはこの里の夜が嫌いではない。乾燥した空気のおかげで星空の美しさはアズマでも随一だし、皆が寝静まった夜になると、日中には雑音でか…

平和が一番だよネ

「……! 今日という今日こそは、離さないからな……!」 人もまばらな冬の里に、凛とした声が響く。出会った頃よりずいぶんと情緒豊かに感じられるそれは、敏感なフブキの耳にしっかりと届いた。 この二人なら万が一もないだろうが、冬の里の神として、争…

想わずにはいられない

※龍の国特大ネタバレ注意 ---  私の故郷は、とある悪神によってたやすく滅ぼされてしまった。憎悪にまみれ、快楽のままに人を喰らったあのバケモノを、私は一生忘れることができないだろう。 頭のない亡き骸がそこいらじゅうに転がっていた。やわらか…

言うまでもないね

『……そうですね。もしかしたら、リヴィア署長の言うとおりかもしれません』 アレスさんのあのひと言が、耳の奥から消えてくれないのはなぜだろう。「一期一会」の一室、「サクラ草の間」で寝転ぶ傍ら、わたしは見慣れない天井を眺めながら十七回目のため息…

「実りある恋」

『ああ、いいんじゃないカ? 外に出るのは悪いことばかりじゃないし、そのほうがの世界も広がるだロ』 ――わたし、この町の外を見てみたい! 唐突に言い放ったわたしに向けて、おじいちゃんはのんびりした笑みを湛えながらそう言ってくれた。  おじいち…

「変わらぬ恋」

 目を疑っタ。足元がやけにふらついて、呼吸すらも忘れてしまいそうになっタ。例えるなら、まるで天地がひっくり返るような感覚……だろうカ。 あるはずのない存在がいたんダ。否、「存在」ではない、ただの「色」。セルフィアならまだしもこのリグバースで…