またスタ第一章

袖振り合う廊下

 すらりとした長身に紫色の髪、水色のメッシュとピアス。やけに整った顔立ちも相まって、彼は印象に残らないほうが難しいくらいの人間だった。 やたら真剣に工具やパーツの部類を物色していることだけ気になったが、接客しているときは物腰柔らかで話しやす…

ご機嫌なスター

「そういえば玉村、お前、下の名前は何というんだ?」 それはひどく突然で、しかし、ごもっともな問いかけだった。 彼とともに学級委員の仕事をこなすようになって、二週間目の放課後のことである。私たちは先生に言われ、とある資料を教室から職員室まで運…

陰と陽

 私の父は、小さなホームセンターを経営している。 店自体はそれほど大きくないものの、父の愛想の甲斐あってか意外と常連客は多く、近所のおじさんやおばさんたちには重宝してもらっているほうだ。 私も幼い頃から店内に入り浸り、従業員やお客さんにたく…