短編(高科)

こころに触れる

「――高科先輩。お誕生日、おめでとうございます」 それは、なんてことない夜のことだった。 寮の中庭で夜風に吹かれている高科へ、がそっと声をかけたのである。星のさやけさを邪魔しないよう、つとめて静かな語り口で。 なぜならば、今日は六月十四日。…