香らぬ花と秘する爪

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 ――今週の土曜な。問題ないで、空けとくわ。 スマホロトムを介して送ったメッセージの返事が来たのは、送信してから数時間後の、静かな夕暮れの頃だった。思えばあの日も人を待たせていると言っていたし、なかなかどうして多忙な身のうえであるのだろう。…

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 わたしには、たったひとりの弟がいる。 彼はとてもひたむきで、努力家で、時には眩しいくらいの光を放つ。まるで陽光に照らされた雪景色のような子だ。わたしにとっては文字通り世界の中心にも等しく、誰よりも何よりも大切で愛おしい存在である。 あの子…