Log(アイナナ)

そんなこと、したい(天)

「さん、ねえ、キスしようか」 それは、なんてことない食後のことだった。 久しぶりに夜を共に過ごせるからと、2人でご飯をつくったりして。「お好み焼きとか楽しそうだよね」という私のふざけた提案を天ちゃんは快く受け入れてくれて、そして久々に姿を見…

覚えているよ(一織)

 ――薄くはあるが決して華奢ではないその後ろ姿。背後からでもわかる凛とした空気は、少しだけ人を寄せつけなくはあるが拒絶の色など少しもない。ただ不器用で、妥協を許さぬ、才覚ゆえの意識の高さが他人との齟齬を生んでいるだけ。 懐かしいような初めて…

気持ちのピース(天)

「かっる……」 かくん、と足元をすくわれる心地がしたと思うと、瞬きのあいだに現れたのはどこか不服そうな天ちゃんの顔。いわゆる至近距離、目の前、少し身を乗り出せば簡単に唇が触れられそうなところにある現代の天使の表情は渋い。なあに、つとめて冷静…

菓子もイタズラもないけれど(天)

「で……出来……て、ない、」 おかしい。嗚呼、いったいどうしてこうなったのだろう。 キッチンはいつもと変わらず清潔でピカピカのまま、調理道具だって天ちゃんのお眼鏡にかなった高性能機器の一式だ。材料も入念にレシピサイトや初めてのお菓子作りと題…

ぼくたち日和(天)

 IDOLiSH7、TRIGGER、Re:valeの12人が新しい試みに挑戦すると聞いたのはつい先日のことだった。 なんでも、各人の誕生日に発売されるらしいムック本。私生活を激写したとっておきの写真、メンバーとの対談というおいしい要素をしっ…

君ってやつは(天)

「今日、楽とケンカした」 ぽつり。まるで独り言のようにこぼされたそのひと言は、どこか拗ねた幼子のような、あどけない響きを持っていた。 小さく引かれた服の裾に従ってゆっくり振り返ってみると、そこには限りなく無表情、けれどどこか惑うような表情の…

はじまりの足音

 ひとつ、足音もなく忍び寄る人影があった。その影は神とも悪魔とも取れる表裏を持ち、答えの如何でがらりと顔を変える。奇しくもその男を神とさせた少女はゆっくりと、自らが立つべき舞台を見据えていた。「、大丈夫かい」「もちろんです」 簡潔な、けれど…

きれいなきみへ(天)

 出会ったばかりの頃は、私よりもすこーし大きいくらいだった。華奢で、真っ白で、凛としていて、けれどあどけないところもあって。それでいて頼りなさは微塵も感じられない、女の子のようにも思える反面、誰よりも男の子である。例え撥ねつけられようとも、…

出会いの爛漫、恋の花(天)

「あ! 君が天くん? 初めまして、九条です。今日から私が君のお姉さんだよ、よろしくね」 ――人の良さそうな笑みを浮かべた彼女は、当時のボクからしても警戒心を抱かせるような人物には見えなかった。無二の両親や弟と離れて暮らすこと、それに幾ばくか…