ないしょだよ

 料理をする人にとって、「おいしい」は魔法の言葉。料理を食べる人にとって、「おいしい」は幸せの味。私はそう信じてる。
 私は料理を作るのが好きだし、食べることだって大好き。私のご飯を食べてくれること、それを「おいしい」って言ってくれること、その「おいしい」を自分でも味わえること。これが私の幸せ。
 そして、どんなに第一印象がヘンテコでも、それさえあれば印象なんてものはいくらでも引っくり返るんだよね。ガジさんのことだって、最初は普通に変な人だと思ったもの。初めて見たのは交流祭で、そのときは会話らしい会話なんてしなかったんだけど。
 まともに話をしたのは、ソル・テラーノ砂漠の星降りの砂原で倒れてたガジさんを助けてから。私戦闘とか全然ダメだから、集落まで運んでいくの本当に苦労したんだよ? しかもね、目が覚めたと思ったらいきなり「カレーうどんが食べたイ」とか言ってさあ。本当にびっくりしちゃった。幸い材料はそろってたから、すぐに渡すことができたんだけど。
 そしたらね、「おいしかったヨ」って。「ありがとウ」って言ってくれたの。にっこり笑ってね、私の大好きな言葉をふたつもくれたんだ。
 ……それからだよ。私がガジさんとまともに話もできなくなったのは。ガジさんのことを、こーんなに好きになっちゃったのは。
 えっと……バレバレだと思うけど、このことは内緒ね?