カレンダー(ディルック)

 カレンダーの日付を見ながら、ハーネイアはじっくりと思いふけっていた。今日は彼女にとってひどく特別な日であり、ほんの少し淋しさを連れてくる日でもある。
 何を隠そう、今日は彼女が初恋のあの人――ディルック・ラグヴィンドに出会ってからちょうど四年となる日なのだ。彼に心を奪われて四周年とも呼ぶべき節目ではあるものの、しかし、今このモンドに彼のすがたはいっさい見えない。
 彼がどんな目にあい、何を思ってこの国を出て行ったのかはわからない。詳しい話はハーネイアの耳には届いていないし、仮に教えてもらったとしてもすべてを理解することはできないだろう。ラグヴィンド家の跡取りであり、将来この国を導く立場に立たされる彼を取り巻く事情なんて、きっとひどく複雑で難解なものであるだろうから。

「ディルック様……お元気だといいな。危ない目にあったりしてませんように」

 カレンダーから視線を移し、窓枠の外へ目を向ける。抜けるような青空はモンドの風によって雲がゆっくりと散歩をしていて、昨日と変わらぬ平和な様相を表していた。
 昨日も、今日も変わらない。それはきっと明日も同じで、こうした平和な毎日はずっと続いていくのだろう。大好きなあの人だけ忘れ去ったみたいに。

「ハーネイア、お母さんちょっとお買い物に行くけど……あなたも一緒にくる?」
「あっ……はーい! いく!」

 ぱたぱたと軽やかな足音を立てて、ハーネイアは母の元へと駆け寄っていく。いつもどおりの、大好きな人が欠けた日常を送るために。
 彼女が再び彼に――ディルックに相まみえるのは、ちょうど四年後のことである。

原神四周年おめでとうございます!
2024/09/28