ねえ?(ナタネ)

 シラシメくんは、人付き合いというものが少し苦手なのだと言う。
 あたし自身も、それにはまあまあ納得する。あたしが彼と深く付き合うようになったのはつい最近のことだけど、それでもなんとなく――否、恋人として彼のことを目で追うようになったからこそ、察せられた違和感なのかもしれない。
 基本的には器用な子だ。経験不足は否めないけれど学習能力は高いし、一度教えたらだいたいのことは理解できる。素のポテンシャルは高い子というのが、彼に対するあたしの認識。
 そうやって何でもそつなくこなす彼だからこそ、距離感の奇妙さが目についてしまうのだろうな。少し前に、幼い頃は近所の子ともうまく馴染めなかったし、友だちはオレンジくらいしかいなかったと、「こんなことナタネさんに知られたくないんですけどね」と申し訳なさそうに笑いながら打ち明けてくれた。あたしがその後彼のことを思い切り抱きしめてしまったのは言うまでもない――
 ええと、まあ、とにかく! シラシメくんはおだやかなくせに人付き合いの経験が浅く、何をするにもあたしのことばかりを考えるからおかしくなっているんだと思う。そして、そういった不格好な部分を正してやることこそが、恋人であり年長者でもある、あたしの役目なのだけれど……

「まさか、あの子がこんなにドライな距離感の持ち主だとは……」

 納得といえば納得。でも、微妙に首を傾げてしまう。あんなにあたしのことを好きだとか言っといて、一緒に住むようになった今でもそれほどベタベタすることはなく、一定の距離を保たれてしまうとは。そのくせ毎晩同じベッドで寝たがるし、挨拶のキスは欠かさないし、それ以上のことも人並み以上にしていると思う。それなのに普段はさらっとした距離感のまま、あたしたちは世間とは一風変わった「ラブラブ」を味わっている。

「まあ、あんまりベタベタしすぎるとちょっと鬱陶しいし、こういう距離感のほうが長続きするとは思うんだけどね」

 どうしようもない悩みごとをロズレイド相手に吐き出しながら、あたしはか細いため息を吐いた。

「……何が不満って、これじゃあまるであたしのほうが、シラシメくんといっぱいイチャイチャしたいみたいじゃない?」

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https://shindanmaker.com/375517

ダイパ18周年おめでとうございます
2024/09/28