翹英荘では、数え切れないほどのフワフワヤギが至るところで飼育されている。フワフワヤギはとても温厚な性格で、下手にちょっかいをかけない限りは人間にも友好的に接してくれるのだ。
もちろん、翹英荘の生まれである美帆にとっても、彼らはひどく身近な存在だった。幼い頃には新鮮なミルクを飲ませてもらったこともあるし、仲良しのフワフワヤギが突然姿を消してしまって、涙がとまらなくなったこともある。
あのときは、両親のみならず嘉明も必死で美帆のことを慰めてくれた。どっかに遊びに行ってるだけだとか、きっとすぐ帰ってくるだとか――あのフワフワヤギが肉になって出荷されたのだと察したのは、それより数年先のことだったが。
しかし、どうやらこのエピソードは嘉明にとっても印象深いものであるらしい。なぜなら彼は、茶畑の間をのしのしと歩きまわるフワフワヤギを見るたびに、ひどく感慨深そうな調子で口を開くのだから。
「そういやさ、ちっさい頃に仲良しのフワフワヤギがいたよな、オマエって――」
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2024/08/21