無題(dngn/苗木)ふんわりネタバレ

「あ、ねえ、詩百々さん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど――」
 刹那、わたしの心臓はにわかに跳ねる。大げさに揺れそうな肩をすんでのところで押さえつけて、平静を装いながら振り向いた。
 わたしの目線よりも少しだけ高いところにいた苗木くんは、ほんのり情けない笑みを浮かべながら、わたしに向かって手を合わせている。
「じつはさ、今日の授業でちょっとわからないところがあって……そうしたら、舞園さんが詩百々さんに聞くといいよって言ってたから」
 教えてもらえるかな? 申し訳なさそうに眉を下げながらも、苗木くんは怯むことなくそう告げた。

 
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