もお!(ガジ)

公式で片想いフラグのあるキャラとの恋愛描写

「グリシナの髪は綺麗だよナ。指がするする通って気持ちが良イ」
 私の髪をひと束手に取りながら、出し抜けにそんなことを言うガジさん。ひどく優しげに細められた隻眼は冗談を言っているふうでもなく、私の胸は緊張や喜びで思い切り跳ね上がる。
「な、なあにぃ……いきなりそんなこと言って」
「べつにいきなりでもないぞ、ずっと思ってたことだからナ。フワリのときだってひときわ手触りが良いシ」
 うんうんと何度もうなずきながら、ガジさんは何かに納得したような様子を見せる。もお、と私が頬を膨らすと、今度はくすくすと笑って私のことを見つめてきた。
「そんなに膨れるなっテ」
「だって……」
「うン?」
 私の髪から離れた手が、今度は頬へと伸びてくる。ふに、とつついてくるそれはこれまたひどく優しくて、再び胸が締めつけられるようだ。
「は……恥ずかしくって。改めて言われると、変な感じ」
 言うと、ガジさんはひときわおかしそうにけらけらと笑った。あまりの笑いっぷりに私の頬が再び膨らむまでそう時間はかからなかったが、しかし、ガジさんはそれに慌てるふうでもなく、とても幸せそうな顔をして微笑むのだ。
「グリシナは本当に可愛いナ」
 大好きな人からの、「可愛い」というひと言。
 それだけですぐに機嫌を直してしまいそうな自分が、このときばかりはほんの少し嫌だった。

 
あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『黒髪』です
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