ポケットじゃないモンスター(セキ)

 よもや、こんなにもしみったれた想いを抱くようになるとは。
 色男が聞いて呆れる――なんていうのは、彼女を愛するようになってからきっと何度も思ったことだ。
 世間から見れば取るに足らないような娘で、老輩たちからすれば不釣り合いだとか、似合わないとか、そんな言葉ばかりを投げかけられる。それでも自分は彼女がいいし、もはや彼女以外目に入らない、と言っても過言ではないくらいだ。
 それくらいに自分は――コンゴウ団リーダーのセキは、細い肩で懸命に生きる少女を。ヨヒラのことを、このうえなく愛している。
 ――冒頭の想いはみみっちい嫉妬心から来るものだった。
 セキ自身、ヨヒラから目いっぱい愛されていることも、彼女が浮気な質でないこともわかっている。深く深く、理解しているはずなのに、反面、どうしても不安が拭えなくて困るのだ。
 まるで鉛のように腹の底に溜まるそれは、いっさいを発散させられないまま、少しずつ、ほんの少しずつだけれど、セキの心を暗くする。
 そして、気づけばみっともない独占欲まで頭をもたげはじめて――まるで猛獣のようなその激情を、ずっと腹の奥の奥の奥で抑えつけているのだった。

 
あなたが×××で書く本日の140字SSのお題は『誰にも渡さない』です
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