落ち着いちゃうんだ

 天狗様が現れるときはいつも、さらさらと木の葉の音がする。それは天狗様がわたしと同じ草元素の「神の目」を持っているせいかもしれないけど、きっと葉っぱたちが天狗様のことを好きだからなんだろうな。
 とても優しいその音はたまに眠くなっちゃうくらいで、わたしはときどきあくび混じりに天狗様のことを迎えちゃうんだけど、そのことについて天狗様から何かを言われたことはない。むしろ、「今日は良い天気だもんな」とか「最近仕事が忙しいのか」とかって、わたしのことを心配してくれるくらいなんだ。

「天狗様って、顔に似合わず優しいよね」
「……そう言うお前は、猫又のくせにひと言多いな」
「にゃ! わたしが猫又なこととひと言多いところは関係ないよー!」
「ツッコミどころはそっちかよ……」

 呆れたようにため息を吐きながら、天狗様はぽすんとわたしの頭を撫でてくれる。おおきな手のひらはおばあちゃんのものとは全然違うけど、わたしはこうして天狗様に頭を撫でてもらうのが好き。よくわかんないけど安心するから。
 わたしがゴロゴロと喉を鳴らしながら天狗様の手のひらにすり寄ると、天狗様はもう一度おおきなため息を吐く。「お前ってやつは本当に……」なんてお小言が聞こえてきた気がするけど、天狗様がぶつぶつ言うのはいつものことだし、別にいいか。

「ねえ、天狗様」
「なんだよ」
「今日ってすっごく良い天気だし、天狗様も一緒にお昼寝しない? わたし、なんだか眠くなってきちゃったよ〜」
「ふん……俺も暇じゃないんだけどな」

 そうやってぶつくさ文句を言いながらも、天狗様がわたしを引き剥がすようなことはない。むしろ、お膝の上でまるくなったわたしが落ちないようにしっかり抱えてくれるくらいだった。
 天狗様のお膝はおばあちゃんに比べるとゴツゴツしてて硬いけど、不思議と寝心地はよく感じる。眠るわたしの頭を撫でてくれる手のひらもあたたかいから、わたしは天狗様と一緒にお昼寝するのがすごく好きなんだ。

「天狗様、おやすみなさい〜……」
「おう、おやすみ。ゆっくり休めよ」

—

#novelmber 28.さらさら
2024/11/04

送信中です

×

※コメントは最大1000文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!