恋をしている

 ――先生! 今度っ……あ、あ、あ、あたしと、デートしてくれないか?
 ――きょ、今日はもう少し、一緒にいていいかな……?
 ――あ、あたし! 実はずっと、先生のことが……!

「〜〜〜〜っ、ダメだダメだっ、無理だ……! ……はあ、どうしてあたしってやつは、こうも勇気が出ないんだろう……!?」

 コレアンバーを抱きかかえて転がりながら、コレイはずっと唸っている。理由としては明白だが、人知れず――ティナリやセノにはバレバレであるが――想いを寄せているダスラに対して、今ひとつ一歩を踏み出せないでいるからだ。
 現状に不満があるわけじゃない。ただ、できれば少し、ほんの少しだけ前に進んでみたい。けれど脳内ですら自分はうまく言葉を吐くことができず、重いため息ばかりが漏れる。
 ……だって、先生はあたしよりいくつも年上で、みんなに好かれてる人だし。優しくしてくれるのもあたしがもともと魔鱗病の患者だったからで、今も付き合いがあるのはきっと、あたしがティナリ師匠にお世話になってる立場だから――客観的な事実を述べているはずなのに、それらはどこか言い訳じみた響きをしている。関係の発展を望んでいるのは紛れもない本心であるが、どうにも後ろ向きなことばかりを考えてしまう自分自身が情けなくて、腹立たしい。

「先生は、あたしのことどう思ってるんだろう……」

 叶うのならば、聞いてみたい。けれど実際、子供の自分なんていっさい相手にされていないだろう。むしろ、こんな自分を恋愛対象として見ているほうが異常であるくらいだ。
 ……望みのない、恋だろうか。それでも、彼のことで思い悩むこの時間はコレイがずっと憧れていた平和な日常そのもので、この苦々しい思いですらもなんとなく愛せるような気がした。

(明日こそ頑張ろう。先生と、少しでも長く一緒にいたいし……)

 コレアンバーを抱え直して、コレイは静かに目を閉じる。ティナリに出された宿題の内容を、さり気なく頭から追い出して。

—

貴方は×××で『いえない一言』をお題にして140文字SSを書いてください。
https://shindanmaker.com/375517

2024/10/20

送信中です

×

※コメントは最大1000文字、5回まで送信できます

送信中です送信しました!