Log(刀剣乱舞)

さらわれる城、花のひとひら(薬研)

 大将の、泣いている顔が好きだった。 人前で恥をかくまいと気丈に振る舞う姿は時に痛々しく、庇護欲を掻き立てられると同時に加虐心をそそられるのもまた事実。触れれば壊れそうなほどに脆い、さながら幼子を思わせるその小さな背中を撫でるのか、抱くのか…

「特別」(獅子王)

 畑仕事は、好きじゃなかった。 そんなことをする暇があるなら、ひと狩り行って猪でも何でも捕ってきたほうが腹の足しになるだろうと思っていたし、野菜類があまり得意でないこともあって、土いじりでドロドロになることへの拒否感もひときわ強かったんだと…

君を想う、ゆえに。(薬研/獅子王)

「お姉ちゃん、最近紫好きだよね」 深夜。本丸の片隅に宛てられた私室にて、所属する刀剣男士の談義を行っていた最中。やれ誰が美しかった、やれ誰はイマイチだったなどと、独自の採点を交えながら話していた折、ふと発せられたの一言に、は大きく目を見開い…

面白いよね(鯰尾)

 大広間の片隅で、机の上に置かれた皿の、真ん中に鎮座する三角の物体をぷすり。確か「フォーク」と言ったこの食器は、こういったおやつを食べるのに適していた。 今か今かと、まるで親鳥を待つ小鳥のように落ち着かない妹へ、ひとくち。あーん、を合図にし…

ああ、炎が。(鯰尾)

 あつ、い。 ぽつりとこぼしたその一言が、敵と対峙する最中の、いやに静かな地下の空気に反響する。鯰尾たち第一部隊の面々が、彼女の呟きという名のSOSに気づいて振り返った頃にはもう、はその場に膝をついていた。「う゛ぇっ……」 泥だらけの地べた…

こんなことすら(鯰尾)

 俺がこの本丸で呼び起こされたのは、粟田口の兄弟のなかでもかなり後のほうだったと思う。 本丸全体で見ても2番目に古株であるという乱と、主さんと特に親しい仲であるらしい薬研を筆頭に、弟たちから人としての生き方を教わった。箸の使い方、夜の眠り方…

お使い粟田口(鯰尾)

「鯰尾くん、ちょっといいかな」 さて、今日はどんなイタズラをしてやろうか。笑って許せるものから可愛くないものまで、長谷部の背中を見ながら様々な案を巡らせる鯰尾に話しかけてきたのは、審神者姉妹の片割れであるだった。刀剣たちを目覚めさせ、まるで…

無題(獅子王)

×××へのお題は『惚れたほうが負け、とはよくいったもんだ』です。https://shindanmaker.com/392860花丸を見たよ!的な、パロディ半分でお願いします---「獅子王、獅子王! ちょっと手伝って~!」 どこか弾んだの声色…

無題(薬研)

×××へのお題は『無理やり奪って、今すぐに』です。http://shindanmaker.com/392860---- ――もういやだ、もう、やめてしまいたい、帰りたい。 日々に疲れ、俺のもとへやってくる度にが漏らしていた弱音だ。本当はこん…

無題(獅子王)

お題は『近すぎると怖い、離れても嫌。』です。http://shindanmaker.com/392860--- 刀と審神者。神と人。兄と妹。どれでもあって、どれでもない。そんな関係だと思っていた。否、そんな関係であろうとした。 彼と自分には…

無題(堀川)

「兼さん! 裾、ほつれてるよ」 ぼうっと本丸の縁側に座り込み、何をするでもなく青空を眺めていたときだった。ふと耳に入る聞き慣れた声に、自然と意識が引っ張られる。 直すからちょっとだけ待っててね。そう告げた堀川国広は、まるでかしずくように膝を…

私はそれを恐れるだろう(鯰尾)

 誰かが言った、自分たちは似た者同士なのだと。 生憎と私にはその言葉を否定する理由がない。ひとつ拾うとするなら見た目だってそうなのだろう、前髪は尚のことだが頭頂部で主張するくせっ毛、黒髪、色こそ違えどまあるい瞳。顔立ちだってそうかけ離れてい…