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ああちくしょう(黒バス/福井)

 昼休み、運動部員に負けず劣らずの昼飯を平らげたがオレや氷室の膝に乗っかってくるのはもはや日常茶飯事と化していた。いつもは無言の戦いを繰り広げたりもするが、今日は運よくオレの膝がお気に召したらしい。こいつがすりよってくるたびに周りの視線が刺…

逃逃逃逃逃逃、逃?(黒バス/福井)

 汚いところを見られてしまった。唯一、「彼」にだけは見せたくなかった自分の姿。逃げ出したい。逃げ出したい。けれどそんなことは叶わない。逃げ出したい。逃げてはいけない。「どうしよう……」 枕に落ちる滴の跡は、一晩中ただ広がるばかりだった。  …

動き出す(黒バス/福井)

 とあるマンガのキャラクターが「勝てる」やつは「勝ちたい」なんて思わないと言っていたように、「会える」やつは「会いたい」だなんて思わないのかもしれない。あれから数年経って大人ぶったオレは、「会える」という望みの薄さをすっかり理解してしまった…

バスケやらねべか?(黒バス/福井)

※捏造注意  母親の実家が東京にあるのは昔からよく聞いていたが、こうやって訪れてみるのは生まれてこの方初めてだ。生まれ育った秋田と違って、ここにはたくさんのものがある。それはひとも、ものも、そしてこの上ない淋しさも。こんな都会ならなに不自由…

旅立ちの時間(暗殺教室/学秀)

 ――――戻ってくるか、。  僕らE組は終業式へと向かう途中、紙と鉛筆での激戦を繰り広げた宿敵――五英傑の面々とかち合わせた。 E組の晴れやかな表情に対して彼らは苦虫を噛み潰したような顔だ。無理もないだろう、今まで最下層だと見下してきた僕ら…

前進の時間(暗殺教室/前原)

「苦手」というのは一種の逃げかもしれない。俺は逃げている。彼女の真剣な想いから。 今まで軽い恋愛ばかりしてきた。本気になるべきじゃないと思っていた。そのときそのときが幸せならばそれで良い、いつか嫌いになるならその一瞬を楽しむ。それが俺の恋愛…

初恋の時間(暗殺教室/学秀)

 ――――たすけて、しゅーくん。 もう2年も前の出来事だ。2年も前の彼女の声が、未だに頭のなかをこだまする。「お前の笑顔を見たのはいつぶりだったかな……」 机の端に伏せられた写真立てを、ついと久々に起こしてみる。そこにはまだ小学生だった自分…

出会いの時間(暗殺教室/赤羽)

 赤羽業は気まぐれな人間だ。いたずらっ子のような顔を見せ、周りを惑わせたかと思えば善良なそぶりをし、時に極めて残虐な行為にも走る。……よくわからない、それが私の率直な感想である。 しかしよくわからないからといって彼を嫌っているわけではない。…

一目惚れの時間(暗殺教室/前原)

 ――脱落者。E組に落ちてきた者たちは、この椚ヶ丘中での学校生活においてそう揶揄されるだろう。 それはここにいるE組生徒全員に貼られたレッテルであり、それぞれ思うところは違うにしても大なり小なりの傷を生んでしまう不名誉な勲章でもある。 殺せ…

あだ名の時間(暗殺教室/赤羽)

「イケメグ……」 ぽそり。さんがつぶやく。……片岡さんのあだ名に反応したのだろうか? なんでも茅野の話だと着替えのあいだからずっと考え込んでいたらしく、ある種の不気味さを感じたとも言っていた。 放課後になってもさんは、何度も「イケメグ」を繰…

「幼なじみ」の時間(暗殺教室/学秀)

 昔から、彼は頭ひとつ抜きん出ていた。 それはきっと彼の父親による教育のたまものであり、彼自身の才能と努力が実を結んだ結果でもある。 私は幼なじみという間柄、周りのギャラリーよりは彼を理解しているだろうという自負があるし、彼が恵まれた才能に…

「おめでとう」の時間(暗殺教室/前原)

「わり、磯貝。俺ちょっと風に当たってくるわ」 そう言い残して、旧校舎へと続く道を逸れた。 ……毎度毎度のことながら、やはりキツいのだ、あれは。体育館中に響く嘲笑は慣れようとして慣れるものではないし、いくら殺せんせーのおかげで健やかに過ごせて…