SS(原神/嘉明)

私の知らない君が増えてく

 ――夢を見た。嘉明が翹英荘を出ていく日の、何も言えなかったときの夢。 この夢を見るのはいったい何度目になるだろう。きっと、両手両足すべての指を使っても数え切れないくらいの回数、私は嘉明を見送っている。いつもいつも何も言えなくて、いつもいつ…

落とし蓋

 の泣き顔なんて、今までの人生で何度も見てきた。 近所のガキ大将に泣き虫だっていじられたときとか、かくれんぼで誰も見つけられなかったときとか、仲良しのフワフワヤギがいなくなったときとか、截拳道の修行がしんどいときとか。他にも、オレは幼なじみ…

いなくなった友だち

 翹英荘では、数え切れないほどのフワフワヤギが至るところで飼育されている。フワフワヤギはとても温厚な性格で、下手にちょっかいをかけない限りは人間にも友好的に接してくれるのだ。 もちろん、翹英荘の生まれであるにとっても、彼らはひどく身近な存在…