短編(マリィ)

お嬢様ネットワーク

「ねえ……さんって、スイーツは好き?」 それは、ひときわ賑わうカフェでのんびりしているときのことだった。お気に入りのモモンソーダに舌鼓をうっていたマリィは、あ、と思い出したように声をあげたあと、そうしてぼくに訊ねてきたのだ。 立派なバニラア…

踊れや躍れ

 たたん、たたん、たん、たたん。スパイクジムのバトルフィールドに、リズミカルなタップダンスの音が鳴り響く。 軽快なステップを追う瞳は爛々と輝いていて、興味津々といった具合に思わず両の頬が緩んだ。ついさっきまでジムリーダーとして鋭利なバトルを…

メリーメリー、クリスマス

 バウタウンにあるシーフードレストラン防波亭は、オールシーズンどこをとっても賑わうような人気の店だ。 かつてジムチャレンジ真っ只中だった頃に素通りしたこの店へ、よもや今頃になって訪れることになるとは果たして誰が予想しただろうか。潮の香り漂う…

くらむ、くらい

「さんもお酒飲むんだ」 パンくずのひとつも残っていない食器を運んできたマリィが、出し抜けにそう持ちかけてくる。 なんのことだと彼女の視線を追ってみると、そこにあったのは食器棚の端にぽつねんと置かれていた酒瓶だ。半分ほどまで減ったそれに興味が…