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誓いの弓立(ジェローム)

 ジェロームがひどく優しい男であるということを、恋人であり幼なじみでもあるわたしは深く理解している。 彼は真っ当な感性を持った常識人だ。まあ、仮面の趣味やそのあたりは少し人と違ったものを持っているけれど……それでも彼が面倒見の良い優しい人間…

青と紅(クロム)

※死ネタ、息子もいる ---  凶刃が息子へ見舞われんそのとき、は半ば衝動的に駆け出していた。 それが息子のことを想っての行動なのかと問われたら、おそらくは返す言葉を持たないだろう。彼女はもはや限界だった。最愛かつ無二の幼なじみを目の前で亡…

縦と横とがまじわる先で(ビオラ)

「いらっしゃい、ビオラちゃん。そろそろ家までの道で迷うことはなくなったかな?」 小気味よく鳴るチャイムの音で胸が躍るようになったのは、一体いつからだったろう。 俺がちょっとした軽口を叩けば、目線より少し下にある顔はすぐにふくれっ面になって、…

おはよっ!(ビオラ)

 ……ずしり。 体にかかる不自然な重みに、あたしは少しの窮屈さと安心感を覚えて目を覚ます。彼が――さんが泊まりに来たときはいつもこう。時には背中から、またある時には正面から、あたしは毎度毎度抱き枕にされている。 ま……まぁ、いわゆるそういう…

2年の月日を飛び越えて(ヒビキ)

 ――あともう少しだ。先をゆく背中を見つめながら、ヒビキは深くうなずいた。 想いを寄せる彼女は自分より10cmほど背が高くて、2つの年の差があるとはいえど見上げ見下げられの関係というのは男としてひどく情けないものである。彼女に言えばきっと「…