てのひらに

04

 次に目を覚ましたとき、の視界にあったのは変わらない真っ白な天井であった。 一切の汚れも見えない白。心が滅入りきったときにはまるで自分を拒絶するようなふうに見えていたこの天井も、今は少しだけ優しい色に思える気がした。この身を包み込んでいるシ…

03

 あたたかい感触がする。額を優しく撫でる手のひらはの傷ついた心身をゆっくりと癒やすようで、その柔らかくも厚いぬくもりに、夢現の狭間で胸の奥をじんわりと揺らした。 この手の主は誰だ――? ビッケのそれとはまた違う柔らかさをした肌は、ほんの一瞬…

02

 結局グラジオの見送りにも顔を出せないまま、は切迫とした日々を過ごしていた。旅立ちから早数ヶ月、彼が居なくても世界は変わらず進んでいき、きっとどこかでは息もつかせぬような日々が流れているのだろうと思う。 かつてのような空っぽの毎日。グラジオ…

01

「近いうち、ここを出ようと思う」 それは、なんてことない昼下がりのことだった。 久々にエーテルパラダイスへと戻った日。ここを出た当時と変わらぬままのグラジオの部屋で、二人は羽根を伸ばしていた。いま落ちついているのはバルコニーに設置されたテー…