思い出は諸刃の剣
ミディ家の掃除中、はたびたび噛みしめるように手を止めていた。 けれど、そうして痛みを乗り越えようとする彼女を責める人間など、ここには一人も存在していない。友人であるバーバラやノエルはもちろん、突然駆り出されたガイアだって、誰一人として苦痛…
Admire 原神 文章 短編(ディルック)
おそろい、ですね
ぐらぐらと、炎が燃えたぎっている。 それらは視界のいっさいを覆い、すぐそこまで迫ってきていた。怯んだわたしは足が竦み、ただひたすら震えることしかできない。 ――また、一人ずつ死んでいく。わたしの大切な人たちが、真っ赤なバケモノに飲まれてど…
Admire 原神 文章 短編(ディルック)
おはようって、言ってくれるの
寒いのはそれほど苦手じゃないけど、冬になると思い出すことがある。 冷たいベッドのうえで体を丸めて、耐えるように夜を越えていたあの頃。誰の声も聞こえなくなったがらんどうの家のなか、寒さや恐怖、孤独に震えながら、数え切れないほどの夜明けを待っ…
Admire 原神 文章 短編(ディルック)
新たな友人
は、今日も猫と戯れている。モンド城には野良猫がいくつも住み着いているため、ここの生まれであるには仲良しの野良猫がたくさんいるようなのだ。 ここしばらくは僕を待つ傍らでキャッツテールを手伝うことも増えているようだし、この子の野良猫ネットワー…
Admire 原神 文章 短編(ディルック)
猫ちゃんでも、許せない!
ディルックは大きく目を見開いた。眼前に広がるその光景から、いっさい目を離せなかった。 今、ディルックの隣には猫と戯れるがいる。一人と一匹は仲睦まじく遊んでいて、猫に構われて嬉しそうなをそばに置きながら、読書に勤しんでいたところだった。 紙…
Admire 原神 文章 短編(ディルック)
知られざる焔
あの子には――には、これ以上つらい目にあってほしくない。その一心で僕はあの子を屋敷へと招き入れ、一人にならないで済む環境を作った。 しかし困ったことに、僕はあの子を前にするとただの卑しい男に成り下がってしまうらしい。……あの子は決して知る…
Admire 原神 文章 短編(ディルック)
毎朝もらえる「特別」を
無防備に晒された寝顔を、ぼんやりした頭で見つめていた。 わたしがディルックさんの寝顔を見る機会は、最近になってとても増えた。同じ部屋の同じベッドで共に朝を迎えるようになって、それからしばらくした頃からだ。 いつもずっと上のほうにあるディル…
Admire 原神 文章 短編(ディルック)
ちいさな島の森の奥
※現パロ、あつ森やってる世界線--- ここ数ヶ月、はとあるゲームに夢中になっているようである。僕自身はあまり触ったことのない部類だが、牧歌的な雰囲気はあの子によく似合うもので、熱中するのも頷ける。 しかし、最近はその度合いがやけに目立つよう…
Admire 原神 文章 短編(ディルック)
カレンダー
カレンダーの日付を見ながら、はじっくりと思いふけっていた。今日は彼女にとってひどく特別な日であり、ほんの少し淋しさを連れてくる日でもある。 何を隠そう、今日は彼女が初恋のあの人――ディルック・ラグヴィンドに出会ってからちょうど四年となる日…
Admire 原神 文章 短編(ディルック)
よぉく、味わって
今日のおやつは楽しみにしておくといい――それだけ言い残して、ディルックさんは私室から出ていった。わたしはいつもと違う彼の背中を見送りながら、三時のおやつに思いを馳せていたのだけれど……(す……すごくいいにおいがする。ちょっとくらい覗いても…
Admire 原神 文章 短編(ディルック)
バルーンフラワー
時おり、が耐え忍ぶように両目をきゅ、と瞑るときがある。はじめのうちは僕の言動で怖がらせてしまったか、もしくは何か嫌なことを思い出させてしまったのかと申し訳なく思っていたが、今しがたそれがおおきな誤解であることが判明した。「ば……爆発しそう…
Admire 原神 文章 短編(ディルック)
僕だけを見ていろ
最近、アカツキワイナリーに一匹の子犬が仲間入りした。それは比喩的な表現ではなく、本物のちいさな犬である。 愛くるしい彼はあっという間に従業員の人気者となり、首輪もしていなかったことから野良であると判断された結果、とあるメイドが嬉々として引…
Admire 原神 文章 短編(ディルック)