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「ゼークス帝国ってやつは本当にろくでもないのねー」
「な……なんだよ、いきなリ」
「いきなりなんかじゃないわ、常日頃から思ってることよ。ほら、あたし元々ゼークスの出身じゃない」
「ああ――そういやそうだったっケ」
「そう。でもね、あの国にいた頃は今よりずっと体を悪くしてて……外なんかほとんど出歩けなかったし、ご近所づきあいなんてものもゼロに等しくて」
「……でもまあ、みんながみんな冷たいってわけじゃないだロ。少しは優しい人もいるはずダ」
「ほんと〜? あたしはあんまり会ったことないなあ。ま、とにかく灰色の日々を過ごしてたってわけで」
「灰色っテ……」
「でもセルフィアに来てからは違うわ! おばあさまは優しいし、町のみんなもあったかいし――」
「ブーケ、そノ」
「なにより、ダグにも会えたしね」
「! ……そう、かヨ」
「うん? どうかした?」
「なんでもねエ! ほら、りんご剥いてやるからちゃんと寝てろ、風邪は引き始めが肝心って言うだロ」
「はーい」

 
20210307