このところ、タルタリヤの目が訝しげに眇められるときがある。はじめこそ気にしすぎかなと思っていたけれど、ここまで続くのを見るにどうやらただの勘違いというわけではなさそうだ。
「ねえ、なんか最近変じゃない? ……わたし、何かした?」
わたしがそう尋ねると、タルタリヤは渋い顔をしながら口ごもる。根が素直で嘘のつけないこの人はすぐにこうして顔に出るのだけど――これも最近になってやっとわかったことだったりする――あからさまに態度を変えたあたり、やはり何かしら思うところがあるらしい。
煮え切らないのが腹立たしくて詰め寄ってやると、タルタリヤは観念したように口を開く。ほんの少し恥じらったような様子はやはりどうにも珍しい。
「ちょっと言いにくいんだけど――君さ、下着ってちゃんと着けてる?」
「はあ?」
「その……なんかさ、最近やけに胸が揺れてるなって思って。それでちょっと気が散るっていうか、妙に気になるっていうか――」
まるで少年のように頬を赤らめながら言うタルタリヤに、わたしはどう返事をしていいかわからなかった。彼の赤面が移ったのかわたしまで顔が熱くなり、わなわなとくちびるが震えてしまう。
「な、なんでそんなこと気になるの!? 見なきゃいいじゃん!」
「そういうことじゃないんだって。俺はいくらでも見たいけど、他の人間の目に触れるのが我慢ならないんだよ」
「ばっ――」
わたしは、とうとう言葉をなくした。タルタリヤの口から出てくる生身の感情には、まだまだ耐性がないらしい――
かろうじて出てきたのは、消え入りそうな「過保護すぎ」というひと言だけ。……いつもそうだ。彼から何かしらの感情を向けられるたび、わたしは照れ隠しのように彼の兄性、テウセルたちへの態度を引き合いに出してしまうのである。
「当たり前だろ。俺のミラのことなんだから、いくらでも過保護になるさ」
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2024/09/27