何もしないということをする(ディルック)

 大聖堂に足を運ぶたび、なんだか不思議な気持ちになる。
 件の事故のあと、しばらくここに保護してもらっていたのがもうずっと昔のことのようだ。あの頃は本当、みんなに――とくにバーバラちゃんにはひときわ迷惑をかけたな、と反省することが多い。
 わたしは、あの頃と変われたかな。うつむいてるばかりではなくて、ちゃんと上を向けるような、元通りのわたしになれてるのかな。
 静かなこの場所を訪れるのは、自分の心を落ち着けるためがほとんどだ。大聖堂の隅っこに座って、何を見るでもなくぼうっとしている時間が必要だと感じることが増えたから。
 けれど、別に疲れているわけじゃないし、悪いことだとは思わない。だって、あの頃のわたしはこうしてぼうっとすることすらできなくて、いつもガチャガチャと無理くり動きつづけていたから。
 神聖かつ静謐な空気をゆっくりと吸い込んで、吐き出す。自分のなかにある淀んだ空気のすべてを澄んだそれに入れ替えてから、わたしはシスター以外誰もいない、がらんどうの大聖堂を後にするのだ。
 今日はこのままみんなのお墓参りをして、それからエンジェルズシェアに行こう。わたしの道を指し示してくれた、神様みたいなあの人がいるところへ。

貴方は×××で『信じる神様が違う』をお題にして140文字SSを書いてください。

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2024/09/11