とある戦士の残した手記(ディミトリ)近親愛

 1186年 角弓の節 3の日。ファーガス神聖王国は、帝国への勝利と「救国王」の即位により、類を見ない騒がしさを見せていた。
 景気が良い、喜ばしい、活気がある、そう言えば聞こえはいいのかもしれないが、こちらとしてはあれやこれやのてんてこ舞いで、文字通り目がまわるような日々を過ごしている。ディミトリも、ドゥドゥーも、あのメルセデスでさえも「のんびりお茶を飲む暇もない」と言っていた。
 けれども正直なところ、私はこの慌ただしい毎日に充足感を覚えている。忙しさすら愛おしいのだ。今までの人生を鑑みても、おそらく今が一番満ち足りているといえるだろう。
 大切な人がそばにいて、大切な人のために生き、大切な人を直接支えることができる。私は、きっとこんな日々を迎えるために過去を生きてきたのだろうとさえ思えた。
 願わくば、数多の屍のうえに立つこの平穏が、せめて彼が眠りについてしまうその日まで続いてくれることを……否、続かせてみせると、私はこの日記にて、誓いを立てておこうと思う。